【深掘り】報道あっても未公表…米軍PFAS1600倍、県が恐れる「協定」の中身


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午前の県議会代表質問後、報道陣の質問に足早に歩きながら答える玉城デニー知事(中央)=3日、県庁

 うるま市の米陸軍貯油施設から有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を含む汚染水が流出した事故を巡り、県と国、米軍の3者が貯水槽から採水した調査で国の暫定指針値の約1600倍に上るPFASが検出された。流出発覚から半年が経過するが、正式に公表されていない。県は「環境補足協定が足かせ」と説明するが、県民の懸念は置き去りだ。住民の健康や環境への影響に関係する問題にもかかわらず、数値の公表さえできない実態があらわになった。

 

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 県の調査結果は7月30日に判明していた。国の結果も同時期に分かっていたとみられる。調査結果は、地元のうるま市にも知らされていなかった。県幹部や政府関係者は「早く公表したかった」と口をそろえた。県によると、米側の同意が得られていない。

 環境補足協定に基づく基地への立ち入りなどの手続きを記した日米合同委員会合意は「合同委員会の枠組みを通じ、調査の方法を協議し、調査が完了した後に速やかに結果を共有する」と定める。だが、公表の時期までそろえるとは明記していない。

 環境補足協定に基づいて立ち入り調査をする前に、県、国、米軍の3者が協議書を作成して合意する必要がある。県によると、その協議書に調査の「条件」として、日米の合意に基づいて結果を公表する旨が記された。

 県幹部は、逆らえば立ち入り自体が不許可とされる恐れがあり「条件を飲まざるを得ない」と説明する。環境補足協定に基づく立ち入り調査そのものが米軍の許可を前提とし、米軍の判断に掛かっているためだ。

 県は一部報道があった3日も公表を見送った。県幹部は「合意を破ると、次回から立ち入りできなくなるかもしれない」と恐れる。

 県は、9月に沖縄防衛局から米側と引き続き協議すると伝えられてから今月3日まで、担当課が複数回、米側との調整状況を国に問い合わせた。だが、9月以降、玉城デニー知事ら幹部が早期公表を要請するなど表立った意思表示はなかった。

 2020年4月に普天間飛行場から泡消火剤が流出した際も国と県、米軍は同5月までの調査結果を9月まで公表しなかった経緯がある。汚染した張本人の米側と結果の公表前に調整する方式は、公表遅れを招くだけでなく、データやその解釈の信頼性も揺るがす。(明真南斗、塚崎昇平)


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