【金武】金武町の河川や地下水源、水道水から発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が国の暫定指針値(PFOS・PFOAの合計が1リットル当たり50ナノグラム)を超える値で検出された問題で、町の公表遅れが、町民の不信拡大を招いている。議会での追及や報道を経てようやく公表に至った町の後手の対応に、町民から「なぜもっと早く教えてくれなかったのか」と批判の声が上がる。町民の健康に直結する事態に、情報公開の在り方と問題解決に向けた町の姿勢が問われている。
具体的数値示さず
県内の米軍基地隣接地域でのPFAS検出が相次いだことを受けて町は2019年度、独自に水質調査に乗り出した。その結果、これまでに河川4カ所、地下水源6カ所、水道水2カ所の計12カ所で国の指針値を超える値が検出されている。
水道水については昨年6月、金武区(今年8月末現在、人口4573人)のいしじゃゆんたく市場で70ナノグラム、並里区(同2811人)の金武町集出荷場で50ナノグラムを検出。同じ水質の水がそれぞれ、両区の各家庭などに配水されていた。
町は昨年7月1日に数値を把握後、一部の水源からの取水を停止したが、「町民の不安を招く」などとして公表は見送った。「調査を終える22年度に公表予定だった」としている。
検出以降、町議会で水道水などへのPFAS混入が問われたこともあったが、町側はこれまで「河川で大きな数値が出た」などと答弁しつつ、具体的な数値を示すことはなかった。
今年9月16日の定例会一般質問で、町議が独自入手した一部の検査結果報告書を基に追及したことで、町は河川と地下水源の検出結果を議会に明かした。しかし水道水については、指針値以下だった今年7月の数値を示して安全性を強調。報道を経た10月1日、指針値を超えた昨年6月の水道水を含む検査結果を町ホームページに公表し、水道水の指針値超えがようやく町民の知るところとなった。
健康への不安
金武区の30代女性は「報道で知る直前まで、子どもが湧き水で遊んだり水道水を飲んだりしていた。昨年で知っていたら水遊びをやめさせ、浄水器を設置しただろう。コロナ禍の巣ごもり生活下の1年余りは大きい」と嘆息した。
並里区の山城宏一区長(59)は「並里は湧き水で有名なので観光にも影響する。国の指針値は暫定であり、町が風評被害を恐れた心情も理解できるが、毎日使う水道水の問題だ。もう少し早く公表してほしかった」と語る。「区民が何十年も高濃度の水を摂取してきた可能性もある。発生源の特定と健康調査を急いでほしい」と求めた。
桜井国俊沖縄大学名誉教授(環境学)は「健康への悪影響が指摘されるPFASに関し、国の指針値を超えた水道水を町民に飲ませていたのだから、すぐに公表して町民に説明し、原因究明に取り組むのが町の責務であり常識だ」と指摘した。
連携不可欠
地下水と県企業局水を混合して水道水を供給している金武町は、指針値を超えたPFAS検出後、「早急に改善する必要がある」と、以前から取り組んできた県企業局水への一本化加速に向け、沖縄防衛局と補助金活用の調整などを進めてきた。
しかし、県企業局水を送り出す石川浄水場は金武町以外に10市町村の水を賄っており、同町への供給量を急激に増やすのは難しい。また、老朽化した送水管や配水池の更新など、受け入れ整備の課題も残る。
町が「国や県の動向を見て検討する」としている健康調査や、水源の検出地点に隣接する米軍キャンプ・ハンセンへの立ち入り調査については、県や国、他の基地隣接自治体との連携が不可欠だ。問題を町だけで抱え込まず、国や県などに積極的に働き掛けていく姿勢が求められている。(岩切美穂)
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