県内各地で軽石被害が相次ぐ中、1日からソデイカ(セーイカ)漁が解禁となった。「何とか漁に出たい」。県内有数の海人(ウミンチュ)の町・糸満市の漁業関係者らは、安全な航行へ独自の対策装置を開発するなど創意工夫を凝らし、徐々に出漁を再開している。
【写真】「マグロが海に落ちている」ドライブの夫婦が発見、素手で生け捕り
県の調べによると、糸満漁業協同組合(東恩納博組合長)に登録する漁船142隻のうち、11月24日時点で約80%に当たる114隻が出漁を自粛している。東恩納組合長は「漁業は市経済の要だ。長引く出漁自粛で多くの漁業者が打撃を受けている」と話し、頭を悩ませている。
軽石の漂流・漂着がなぜ、出漁に影響するのか。原因は船舶エンジンの仕組みにある。
漁船は通常、船底の取り入れ口から海水を吸入しエンジンを冷却させている。しかし、海水に細かな軽石が混じるとエンジンの手前にあるフィルター(こし器)が詰まり、冷却する十分な水量を送れずにオーバーヒートを起こしてしまう。糸満でも10月に漁船1隻が海上でエンジントラブルを起こし、操業停止する事態となった。
こうした状況の中、漁業者らはエンジニアの協力を得ながら、それぞれ独自の対策を模索している。
パヤオ漁の平田光則さんは、フィルターを二つ組み合わせた「フィルター切り替え式」を仲間と考案した。フィルターは通常、船内の機関場に設置されているが、軽石が詰まり掃除が必要となれば手間も掛かるため、目の届くデッキ上に取り付けた。一方のフィルターが詰まっても、バルブで切り替えればもう片方のフィルターを通して海水を送れるため、エンジンを動かしたまま軽石の除去が可能となる。
大城英明さんも既存のフィルターでは能力不足のため、新たな高機能フィルターを設計し、所有する漁船のデッキに取り付けた。11月下旬から漁を再開しているが、「今のところ特に問題なく操業できている」と話す。
他にも船内の魚倉を活用し、ろ過した海水を清水冷却機へ送るシステムを導入している漁師もいる。東恩納組合長は「みんな知恵を絞って頑張っている。取り組みが、少しでも他の漁業者やマリンレジャー業者の参考になれば」と述べた。
(当銘千絵、写真も)
▼【写真特集】沖縄の巨大な生き物たち 見た!釣った!捕まえた!
▼軽石、転じて壺屋焼…彩り豊かに「マグマ釉」 読谷の相馬さん