やんちゃだった中卒の若者に「おかえり」  受け止める場所つくりたい うるま


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 子どもの貧困対策において、中卒の若者は生活実態の把握が難しく、支援制度も少ないため「支援の空白」と指摘する声が多い。うるま市で子どもの居場所を運営する「HOMEおかえり」は、その空白を埋める取り組みを始めている。目標は「やんちゃ」だった子どもの受け皿になり、就業を支援すること。啓発のDVD制作から始め、拠点づくりを目指す。

「どんな時も『おかえり』と言って受け止めたい」と語る赤平若菜代表(右)と新垣覚理事=17日、うるま市のHOMEおかえり

 県内の中学卒業後の進路未決定率は約1・4%で全国の2倍、高校卒業後の進路未決定率は12・4%で全国の3倍だ。学校を離れた子どもを誰がどのように支援するのか。難題に直面している。

 代表を務める赤平若菜さん(41)は、うるま市役所で子育てに関する悩みを聞き、支援につなげる相談員を務めていた。「小さな子どもがいる家庭なら、まずは子どもを保育所に預けられるようにして、親の就業を支援する。でも、子どもが大きいと、途端に行政に手伝えることがなくなる」。相談を受けながらもどかしさが募った。

 自身も5人の子どもを育てるシングルマザー。相談員は市の嘱託職員のため給与水準は低く、ダブルワークで家計を背負った。家にいる時間は限られ、「やんちゃ」に染まっていく子どもとの接し方に思い悩んだ。親子間では感情的になってしまうので、第三者が関わる重要性も感じた。

 相談員の経験、子育ての経験から、中卒以上の支援の必要性を実感し、立ち上げたのが一般社団法人「HOMEおかえり」だ。赤平さんを支える理事の新垣覚さん(53)は、罪を犯した少年の更生を支援する保護司。「やんちゃだった子を受け入れてくれる事業所が少ない。せっかく更生しても、その次がない」と、就業難が立ち直りの障壁となっている現状を訴える。

 支援の第一歩として制作したDVDは、資格取得の方法やビジネスマナー指導、面接対策などキャリア教育に加え、通信制高校に通う生徒、元やんちゃ社長の体験談なども収録した。多摩少年院で子どもの本音も聞き出し、大人に向けたメッセージも発信する。

 今後はグループホームで就業支援する展開を思い描く。赤平さんは「どんな状況でも『おかえり』と言って受け止めていきたい」と語った。DVDは無料配布中。問い合わせは(電話)090(3796)1134(赤平さん)。

 (稲福政俊、写真も)


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