力持ち、海草の葉っぱで綱引きも得意!
海草藻場の足元には、多様な生きものが隠れています。中でも、子どもたちに人気のある生きもののひとつが、アナエビの仲間です。
アナエビは、砂の中に巣穴を掘って暮らす甲殻類で、水中を泳いだりはしません。沖縄で見られるこの種類、
学名の acahthus はトゲという意味で、トゲアナエビと呼んでいますが、最近はヤハズアナエビと言われることも。
さて、人気の秘密は、海草の葉っぱで綱引きができるから!この赤いアナエビは、砂地に開けた直径2~3cmの巣穴の入口に、いつもスタンバイしています。彼らのご飯は海草の葉。巣穴の周りは、手の届く範囲の海草がきれいに刈り取られています。あとは、切れて流れてくる葉っぱをキャッチしようと、入口で待ち構えているというわけ。
試しに、周りの海草を1枚ちぎって巣穴に差し込んでみると、すぐにアナエビが出てきて、ふさふさの毛が生えたはさみで葉っぱを受け取ります。こちらが手を離せば、すぐに葉っぱをスルッと巣穴の奥に持ち帰るけれど、ちょっと意地悪して葉っぱ持ったままでいると、アナエビも葉っぱを持ったまま、引っ張り合いになります。結構力強いのが分かりますよ。
アナエビは、葉っぱにすぐ齧りつくわけではありません。巣穴は、たて穴の奥に広い部屋があり、そこで葉っぱを細かくちぎって貯めておきます。そして、適度に分解されてから食べるのだそう。海藻に比べて、繊維の硬い海草を食べる生きものは実は少ないけれど、穴の中に溜め込んで柔らかくしていたとは、なるほど!
Vol. 47 トゲアナエビ
Neaxius acanthus
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:アナエビ科 Axiidae
● 属:ネアキシウス属 Neaxius
動画撮影:
トゲアナエビ 2020年5月8日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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