安さの理由は「思いやり予算」…米軍ゴルフ場が観光地化 同業者「不公平、客奪われた」


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タイヨーゴルフクラブのクラブハウス。訪問時に駐車場に止まっていた車は日本人のナンバーが100台、米軍関係者のナンバーが17台だった=2021年12月、うるま市栄野比の同ゴルフクラブ

 【中部】米軍の保養施設である「タイヨーゴルフクラブ(GC)」が日本人客に利用を開放し、民間ゴルフ場が規制を求めている問題について、関係者によると利用者は2020年に過去最高の5万人を突破した。その後も施設幹部はより多くの客を開拓するよう促していたという。日本人利用について黙認ではなく、積極的に誘客している施設側の姿勢もうかがえる。

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 思いやり予算で整備され、初期投資もないことから、格安料金が設定されているとみられる。日本人従業員の給与も日本政府が負担。米軍が排他的管理権を持つため、課税もされない。民間ゴルフ場は「不公平な競争で客を奪われている」と指摘する。プレー料は米側の収益となるため、思いやり予算の在り方を疑問視する声も上がる。

 近隣の民間ゴルフ場「高原ゴルフクラブ」(うるま市)は、タイヨーGCが完成した10年には6万人の利用者がいたが翌年は4万5千人になり、一時は3万人近くまで減った。現在は増加に転じているが、コロナ禍でも密を避けられるとしてプレー人口が増えたことが要因とみられ、タイヨー開業後に減った客が戻ったわけではないという。

 高原GCはショートコースだが、タイヨーはほぼ同額でロングコースをプレーできる。高原の関係者は「タイヨーは民間ゴルフ場が真面目に払っている税金も納めず、値下げ競争にまで巻き込まれている」と憤った。

 外務省は地位協定上問題がないとした理由について「米軍との友好親善」を挙げた。だがタイヨーGC関係者は「ほとんどの客が米軍人にエスコートされるわけでもなく、単独でプレーしたりコンペを開いたりしている。観光客が団体バスで乗り付けていて、観光コース化している」と話す。

 米軍の保養施設を日本人が利用することを民間のゴルフ場団体が、問題視していることについて外務省は「提供施設・区域内に設置されている趣旨も踏まえつつ、節度を保っていくべきだ」とした。ただ、年間どれほどの日本人客が利用しているかなどの基本情報も「承知していない」としており、「節度」の実効性は働いていない。

 (島袋良太)


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