コロナ禍で売り上げが落ちた事業者を支援する「月次支援金」の申請で、資料の不備を何度も指摘され受理が進まない「不備ループ」が今も続いている。事業者がコールセンターに問い合わせる様子を取材したところ、電話に出た担当者は「会計の知識はない」「審査に関することは非公開」などと回答していた。月次支援金運営事務局の下請け企業が専門的知識を持たぬまま相談を受けるという、事業のずさんさが垣間見えた。
「不備ループ」にはまっているのは、資格に関する講義やセミナーを開く県内企業。コロナ禍でセミナーが開けず、2020年4~10月分の月次支援金を申請した。3カ月分は支給されたものの、残りの4カ月分で資料の不備を指摘された。同様の資料を提出したにもかかわらず、申請が通る月と通らない月があり、困り果てていた。
不備があると指摘された資料は店舗写真だ。同社は店舗がないため、事務所や講義を開く大学の外観、セミナーを紹介する学内情報誌、講義教本などを代わりに提出した。
経理部門の男性がコールセンターに電話をすると、電話に出た担当者はホームページの画面や講義中の風景などの提出を提案した。男性がホームページを開設していないこと、講義中の写真は資格主催団体の指示で撮影できないことを告げると、担当者は「何か方法はないか確認する」と言って電話を保留にした。
保留音の後、男性が「審査部と相談しているのか」と聞くと「審査部とは連携が取れない。複数の職員で確認していた」と説明した。「(担当者に)会計の知識はあるのか」と問うと「専門的な知識はない」と明かした。「臆測で提案しているのか」との問いには「そうですね」と認めた。
不備の理由が分からず、担当者は何度も答えに窮し、終始申し訳なさそうだ。結局、不備の理由や対処法が分からないまま、相談を終えた。
月次支援金の事務局は大手コンサルグループのデロイト・トーマツ・ファイナンシャルアドバイザリーが受託している。同社は複数の企業に再委託し、コールセンターは別会社だ。
不備ループは昨夏に表面化し、国会でも取り上げられたが、解決に至っていない。
不備ループにより、男性がこれまで提出した資料は数千枚に及ぶという。男性は「不正請求ではないのに申請を諦めるわけにはいかない」と、今後も申請を続ける考えを強調した。(稲福政俊)
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