オリオンビール(豊見城市、村野一社長)は2月28日、30歳以上の従業員を対象とした早期退職制度「セカンドキャリアサポートプログラム」の実施を発表した。同プログラムを利用する従業員には退職金を割り増しして支払うほか、希望に応じて再就職のための支援を行う。同社は25日までに労働組合と合意した。
オリオン社は、グローバル化や少子高齢化などの進展で事業環境が急速に変化している中、より優れた収益構造を持つ企業との厳しい競争に直面していると説明。「競争を勝ち抜くためには組織をより強く、より早く、より軽くしていく必要がある」と強調した。
退職日は5月31日付。対象は同日時点で30歳以上の正社員、嘱託社員、無期契約社員で、募集人数は定めていない。希望退職者には、人材派遣大手パソナの協力を得て再就職支援を行うという。
オリオン社は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、主力の酒類・清涼飲料事業、リゾートホテル事業ともに影響を受け、2021年3月期決算では3年連続の減収減益となった。特に、コロナ禍前まで強みだった業務店用が半減し、観光客の需要も減少した。
取引先や社内からは、経営体力の立て直しを図る方針に理解を示す一方、今後を懸念する声も出た。ある酒販事業者は「(取引は)付き合いで決まることも多い。ベテラン営業マンが退職すると、誰と話をすれば良いのか分からなくなるのではないか」と不安を口にした。
オリオン社のある関係者は「資本が外資になってから、経営方針や社内の雰囲気もがらりと変わった」と話す。
「創業者の具志堅宗精は戦後沖縄の経済復興や、若者の働き口を生み出すためにオリオンビールを立ち上げた。その会社が早期退職を募る時点で、原点を見失ったと言わざるを得ない」と述べた。
別の従業員は「いずれ組織改革をするはずだと思っていた。社の将来を悲観して辞める人も出てくるかもしれない」と案じた。(当銘千絵)
【関連ニュース】
▼元オリオンビール専務の宮里政一さん死去 65歳 外資買収後、一時は社長代行務める
▼【記者解説】県民に支持されるビールへ、業績回復が焦点 問われるオリオン新社長の手腕