里親家庭で育った18歳の子どもたちが巣立ちの時期を迎えている。「自分らしく過ごせるよう、温かく、時に厳しく叱ってもらい、ありがとう」。5日、那覇市で行われた県里親会の壮行会に出席した里子7人が里親らに感謝の思いを伝えた。4月から成人年齢が18歳に引き下げられる時期も重なり、強い自覚が求められる。一方、社会的養護のケアを離れた人たちが孤立するケースも指摘され、期待と不安の中での船出だ。里親たちは「困った時は帰ってきて」と声を掛け、温かく見守った。
現行の児童福祉法では子どもが原則18歳となり、自立能力が確認されると里親への委託措置が解除される。里親と里子の間の関係も、法的には終了することになる。政府は、年齢上限を撤廃することを決め、開会中の通常国会に同法改正案を提出する。
屋良朝栄さん(69)のもとで約7年間暮らした18歳男性は就職の道を選んだ。足に障がいがあり、自らを「自信がない子どもだった」と振り返る。
屋良さんは里子となった男性へさまざまなことに取り組むよう勧めた。何度もつまずきながらだったが、毎日ウオーキングしたり、自転車に乗れるよう練習したり。「何かする人は、何かを残す。何もしない人は何も残さない」。そう言い聞かせながらさまざまなことに挑戦するのをサポートし自信を養わせた。
旅立ちを迎えた男性は「感謝してもしきれない。里親の恥にならない立派な人として生きたい」と決意。屋良さんは「頑張るのを見てきた。独り立ちしても大丈夫だ」と背中を押した。
神谷眞行さん(73)は9年ほど前、当時小学4年生の女児を迎え、里親となった。実子がいない中で、子どもと向き合い「親のまね事をさせてもらいながら、私も彼女も共に成長してきた」と振り返った。委託が解除された後も「困ったらいつでも相談してほしい。それが家族でしょう」と話した。
神谷さんのもとで暮らし18歳になった女性は「困った時には連絡を入れたい。たまには家に寄り、ご飯も食べたい」。静かな声で、しっかり前を見据えた。
県里親会の松川園子会長は「血がつながっていないからこそ、強く太い縁でつながっている。前を向いて歩いてほしい」とエールを送った。 (知念征尚、写真も)
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