2021年2月に航空自衛隊那覇基地で泡消火剤が流出し、民間地域に飛散した事故で、事故翌月に近隣住民から健康被害の訴えがあったことが26日までに分かった。琉球新報が入手した防衛省の資料には賠償で対応した旨も記載されているが、これまで公表していなかった。自衛隊は事故当日「毒性や損傷性はほとんどない」と広報していた。自衛隊は健康被害の内容や泡消火剤成分との因果関係、対応の詳細は明らかにしていないが、取材に「21年3月、近隣住民から健康被害の訴えがあり、防衛省として誠実に対応してきた」と答えた。
泡消火剤の流出を巡っては、自衛隊が当初は含有を否定していた有機フッ素化合物(PFAS)が含まれていたことが後になって判明し、問題となった。自衛隊基地の泡消火剤は航空機火災などに使われるため、一般的な集合ビルなどで使われる製品より強い成分が含まれている。
昨年2月の流出事故では、泡消火剤は近くの保育園やモノレール駅、国道にまで飛散した。自衛隊は泡が付着した施設に対しては水で流せば問題ない旨を伝えたが、消火剤に触れないようにするなどの注意喚起はしていなかった。
琉球新報が情報公開請求で入手した航空自衛隊内の資料には「消火剤によるものと思われる健康被害の訴え」と記されているが、被害の内容や症状の経過の部分は黒塗りにしている。これまで自衛隊は健康被害の訴えを公表してこなかった。
琉球新報の質問に対し、自衛隊は訴えの詳細について「事案との関係も含め相手があることで、答えは控える」と述べた。この訴えの他には、健康被害の情報はないとした。
「健康被害の訴え」について記されているのは航空幕僚監部内の21年3月23日付の文書で、首席法務官名で自衛隊の対応をまとめている。航空幕僚長らが確認したとされる。同4月1日付の「大臣への説明資料」にも記載されている。
内容は大半が黒塗りだが、留意事項として「泡が広範囲に飛散していることから、他の住民らから被害が報告された場合は(那覇基地の)第9航空団と連携して対応する」とあり、他からも訴えがある可能性を想定していたことがうかがえる。
(明真南斗)
【関連記事】
▼【独自】空自那覇基地の泡消火剤から有害PFOS 説明と食い違い