瞬時に変身!周囲の色合いを判断するスマートさ
沖縄の干潟で観察会をしていると、たまに大物に出会って歓声が上がります。その一つが、タコ!
タコは夜行性の傾向が強いのですが、時には、昼間でも巣穴から出て干潟を歩き回る姿を見ることがあります。
海草の生える砂地の浅瀬で見つけるのが、小さめの体に細くて長い腕を持つ、ウデナガカクレダコです。沖縄島では、シガヤーとかシガイダコ、などと呼ばれています。
実はこのタコ、以前はアナダコという種類だと思われていました。でも、2001年以降の調査で、どうやら種類が違うのではないか、ということになり、その後、ウデナガカクレダコという名前がつけられました。タコって形がぐにゃぐにゃで、大きさが測りにくいし、色も変わるし、種類を見分けるのがなかなか難しいのです。
このウデナガさん、変身の名人です。タコは皮膚に色素胞という特殊な細胞を持っています。この細胞の中で、色素をキュッと真ん中に集めれば、全体は白っぽく明るい色になり、色素を細胞中に広げれば、全体が暗い色になります。これを瞬時に行うことで、見事に周囲に溶け込んでしまいます。瞬時に、ということは、周りの景色や色合いを見る目と、それを判断する頭がとても良いということです。
海の生き物の中で、タコは1、2を争う頭の良さではないかと思います。そんな海の忍者、タコ。あなたは探せるかな?
Vol. 52 ウデナガカクレダコ
Abdopus aculeatus
● 目:タコ目 Octopoda
● 科:マダコ科 Octopodidae
● 属:カクレダコ属 Abdopus
動画撮影:
ウデナガカクレダコ 2022年4月17日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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