戦うときは大きいハサミ、ご飯は小さい方で
珍しいカニがいる!というので見に行ったのは、国場川沿いの漫湖水鳥・湿地センター。マングローブ林の中に木道があり、水鳥や泥干潟に住む生きものを観察できます。
さて、その珍しいカニとは…ヤエヤマシオマネキ。いえ、この種類は干潟でたくさん見られますが、シオマネキ類は片手だけ大きいはずなのに、両手が大きい個体がいるというのです!
木道の上から探したら、いました。まだ少し体の小さな若い個体で、確かに両手のハサミが大きい…というか、両手とも中ぐらいに大きい。超レア!
シオマネキの仲間は、小さなハサミで泥をすくって食事をします。そのため、オスは小さな片手だけでご飯。メスは両手とも小さくて、両手でせっせとご飯を食べて、卵を作るための栄養をとります。この超レアな個体は、中ぐらいのハサミのやや小さい方で食事をしていました。
そもそもシオマネキのハサミはなぜ片手だけ大きくなるのでしょう? 実は、オスが小さい頃、最初は両手が同じ大きさですが、ある時片手がぽろっと落ちて、落ちた方は次の脱皮の際に小さなハサミができます。残った方のハサミが、脱皮のたびに大きくなるようです。
この個体もたぶんオス。片手を落とし損なったのか…ごくごく稀にこういう個体が見つかるようです。両手が大きいと食事がしにくいので、成長は他より遅いかもしれません。なんとか頑張って生き抜いてほしいものですね。
Vol. 53 ヤエヤマシオマネキ
Tubuca dussumieri
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:スナガニ科 Ocypodidae
● 属:シオマネキ属 Tubuca
動画撮影:
ヤエヤマシオマネキ 2022年6月18日(豊見城市 漫湖水鳥・湿地センター)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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