携帯・スマホ普及で利用減、赤字続く公衆電話 非常時の役割に再注目


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公衆電話と、災害発生時に設置される特設公衆電話=2019年9月2日、那覇市役所

 携帯電話やスマートフォンなどモバイル端末の普及や、人口減少・過疎化など社会環境の変化によって、公衆電話は利用者の減少が続いている。

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 利用の減少によって収入が減る一方、公衆電話の維持には故障の修理や清掃といった施設保全費、公衆電話本体や電話ボックスの減価償却費がかさむ。このためNTTの公衆電話事業は長年赤字が続き、2020年度の赤字額は約37億円となっている。

 NTT西日本は「通信手段としての効用は相対的に低下している」と認識を示し、90年代以降、公衆電話の削減が進むこととなった。

 公衆電話には、屋外での最低限の通信手段を確保する目的から、総務省が一定範囲内に設置することを定めた「第1種公衆電話」(以下、第1種)と、NTT西日本と東日本が利用状況に応じて独自に設置する「第2種公衆電話」(以下、第2種)がある。

 これまで削減の対象は第2種で、第1種は02年に明確な基準が定められて以降、削減は実施されなかった。しかし、総務省は4月、第1種についても設置基準を緩和することを決めた。

 公衆電話1台当たりの設置範囲について、これまで市街地は「おおむね500メートル四方」だったのを「1キロ四方」に拡大し、市街地以外の地域は「1キロ四方」から「2キロ四方」に拡大した。設置範囲の拡大により第1種電話の必要台数が引き下げられ、所要台数は全国で約8万台から約3万台に減少する。

 県内でも、これまで第1種電話として約1200台が最低限必要だったのが、3分の1程度の約400台に縮小となる。

 一方、公衆電話は電話回線を通じて電力を得ているため停電時でも使用ができ、災害時の通信手段としても位置付けられる。今回の通信障害でも非常時の役割が改めて注目された。

 NTT西日本は「今後は新たな設置基準に則して公衆電話の削減に取り組み、総務省の措置要請内容に従って報告・公表する」としている。
 (武井悠)

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