【識者談話】安倍氏国葬「沖縄抜きの政治」の現れ 小林武氏(沖縄大学客員教授)


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小林 武氏(沖縄大学客員教授)

 【東京】岸田文雄首相が14日の会見で、安倍晋三首相の国葬を実施すると発表したことを受け、県選出・関係議員は「これまでの功績を評価した上での政府判断だろう」「県民を置き去りにした面も否定できない」など、さまざまな反応を示した。

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 安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃されて死去したのは気の毒なことだが「なぜ国葬なのか」という違和感がある。

 政府は国葬開催の理由に憲政史上最長の8年8カ月、首相の重責を担ったことや国際社会からの評価などを挙げる。だが、長期政権に功罪があったことは明らかだ。

 国葬は(法律上の)規定がなく、政府が裁量で決定できる。とはいえ、国民の側からみてその業績について誰もが尊敬し、感謝されるような人物になされるべきだ。政府の決定理由に国民の視点は欠けている。「国民のためにどのような政治をしたか」を厳しく問い、合格した人物に国葬はなすべきだ。

 安倍氏は「唯一の解決策」として辺野古新基地建設を冷血に進めてきた。安全保障法制、南西諸島への自衛隊配備など安全保障政策でも安倍氏の「負の遺産」が沖縄では強く表れている。今回の国葬の実施も「沖縄抜きの政治」の現れと言えよう。

 国葬は秋に実施されると言うので、いま(開催を)決定する必要はない。「アベ政治とは何だったのか」と評価を国民・県民は公正にしなければならない。

 岸田文雄首相にとっては「アベ政治」の功罪双方を正しく評価して国民に問うのが先で、国葬決定はその後であるべきだ。
 (憲法学)

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