国葬に「違和感」「複雑な思いある」沖縄の平和運動関係者や沖縄戦体験者の声 安倍氏死去


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 政府が安倍晋三元首相の葬儀を「国葬」として行うと発表したことに対し、県内の平和運動関係者らは安倍政権が沖縄の基地問題で民意を顧みなかったことなどを指摘し「違和感を持たざるを得ない」と述べた。沖縄戦体験者も直接的なコメントは避けつつ「複雑な思いがある」と明かした。

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 「第32軍司令部壕の保存・公開を求める会」の会長や「元全学徒の会」共同代表を務める瀬名波栄喜さん(93)は「コメントはできないが、いろいろ複雑な思いはある」と明かした。瀬名波さんは太平洋戦争さなかの1943年に行われた、連合艦隊司令長官の山本五十六の国葬を覚えている。「当時は軍国主義のまっただ中にあり、国威発揚の面があった」と指摘。沖縄戦体験者は戦争の準備をして同じ過ちを繰り返すことを懸念していると語り、「再びあのような(戦争の)悲劇を繰り返してはならない」と強調した。

 沖縄平和運動センター顧問の山城博治さん(69)は「凶弾に倒れたことに心からお悔やみを申し上げるが、国葬には違和感を持たざるを得ない」と話した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設問題などで、沖縄の声が国政に反映されていない状況に触れて「全員共通の思いで喪に服すことはできない。複雑な思いがある県民として、国葬はそぐわないと思う」とした。

 辺野古新基地建設に反対する本部町島ぐるみ会議の原田みき子さん(73)は「軟弱地盤などで完成するはずもない工事に税金を無駄遣いし、民主主義を壊した」と強調する。アベノミクスについても「庶民はどんどん貧しくなっている」と実感を語り「国葬にふさわしい人物だとは思わない」と述べた。
 (伊佐尚記まとめ)

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