17日の新型コロナの新規感染者が4165人と急増した影響で、中南部で感染者を治療する14重点医療機関では同日午後6時ごろ、中等症以上を受け入れる病床が満床となった。そのため、夜間は病棟以外の救命室にもベッドを増やして対応している病院もある。県が発表した同日のコロナ専用病床使用率は軽症者を含め62.4%(使用病床404床・確保病床647床)だが、中等症以上の入院調整はすでに困難な状態だ。県対策本部の医療コーディネーターらは「加速度的に患者が増える中、少ない医療資源をどう分けるか。県全体でこの危機感を共有してほしい」と訴える。
県対策本部が重点医療機関の空き病床を把握するシステム「OCAS(オーキャス)」には、受け入れ可能人数0の赤色表示が並ぶ。そんな中、救急隊からは社会福祉施設から運ばれた高齢患者の搬送先が見つからないとの連絡が入った。「急性期病院で初期治療した後、他の病院に入院するにしてもどこが空いているのか」。コーディネーターの出口宝医師(野毛病院)によると、複数の病院が横断的に対応しないといけない事態になっているという。
米盛輝武医師(浦添総合病院)によると、各病院では病棟だけでなく救命室内でも病床を増やしている。それでも対応が間に合わず、搬送された患者を救急車で15~20分待機させる事態も起きているため、救急車の稼働率にも支障が出ている状況だ。感染者の急増により、治療しながら入院の必要性を判断する入院待機ステーションにも救急車が並ぶ時間帯もあるという。
災害医療の専門家でもある2人の医師は、感染者数や病床使用率の数字だけでは「危機的状況が県民に届いていない」と指摘。出口医師は「医療崩壊を回避するため、行政や専門家が市民とリスクを共有し、社会にとって何が必要かを相互に意見交換するリスク・コミュニケーションが必要だ」と訴えた。 (嘉陽拓也)
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