沖縄の6市町村、自衛隊に名簿提供 住民への周知なく勧誘に利用 2015年比で大幅増


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本島内に住む高校生の自宅に届いた自衛隊からの勧誘資料と封筒。無料の食事や宿舎など待遇面を強調した資料も入っていた

 自衛官募集のために18歳を迎える住民の名簿を自衛隊に提供している自治体が、沖縄県内で6市町村に上ることが18日までに分かった。うち5市町村が2021年度から提供を始めている。名簿提供が2市だった15年と比べると大幅に増えている。名簿提供の開始を住民に周知した自治体はなかった。識者は「個人情報の提供は本人の同意がなければ認められないのが原則だ」として、個人情報保護の観点から違法性を指摘している。

 15年に本紙が調査した際、名簿の提供が発覚した沖縄市と宜野湾市はその後、提供を取りやめて閲覧方式に戻している。

 自衛隊は18歳を迎える住民の氏名と住所、生年月日、性別を市町村に請求している。防衛省によると、各地域で募集業務を担う地方協力本部(地本)が、勧誘の資料などを対象者に送付するためだ。県内の高校生らにも毎年、封書が届いている。

 県内では約8割の市町村が、地本側の来庁による閲覧を認める形で対応している。その場合、自衛隊の担当者が手書きで転写することができるが、自衛隊は閲覧ではなく、紙媒体などによる名簿提供を希望している。

 宮古島市は遅くとも17年度以降は名簿を提供しているが、閲覧から切り替えた経緯や時期は正確な記録が残っていないという。名護市、今帰仁村、宜野座村、嘉手納町、伊平屋村は21年度から名簿の提供を始めた。

 名簿を提供している6市町村のうち、対象住民が自衛隊への情報提供を希望しない場合に除外する制度を設けている自治体はなかった。県外では福岡市や大阪市などが事前に自衛隊への名簿提供を周知し、除外を希望する人の申請を受け付けている。 (明真南斗)


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