沖縄の通所型介護施設でも相次ぐコロナ感染、一時閉鎖で運営苦境に 「死活問題」、利用者の健康にも影響


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デイサービスの一時閉鎖を過去3度経験した比謝川の里=7月27日、嘉手納町久得

 入居型の高齢者施設で新型コロナウイルスの感染者が急増する一方、沖縄県対策本部が感染状況を把握していない通所型介護施設でも感染が相次ぎ、一時閉鎖などで運営が苦境に立たされている。嘉手納町のデイサービスセンター比謝川の里では利用者や職員の感染で過去3度、施設を一時閉鎖した。同センターの玉城竜一地域支援課長は「介護業界は利用者や家族を守るために、血肉を削って耐えている状態だ」と語った。

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 比謝川の里では2021年5月と22年1月と6月に職員や利用者が感染した。県対策本部の施設支援は主に入居型施設を対象としており、デイサービスのような通所型介護は一時閉鎖するしか選択肢がない。運営側にとっては死活問題だ。

 玉城課長によると「施設の多くでは利益率1~2%がざらで、良くて5%前後」という。仮に1カ月ほど業務停止すると利用控えにもつながるため、玉城課長は「年間の利益が吹き飛び、減収分を取り戻すまで数年かかる施設もある」と苦しい現状を語る。

自宅待機で健康悪化

 一時閉鎖は経営面だけでなく利用者の健康状態悪化にもつながる。自宅で待機する高齢者は運動量が減ることで、転倒による骨折などのリスクが高まる。利用を再開しても、体力回復までに2週間ほどかかるという。

 利用者の健康維持のため、玉城課長は「今は情報発信に力を入れている」と語る。利用者家族と情報交換をして体調変化を把握し、家族が濃厚接触者になった場合は相談を受けるなどケアの幅を広げている。「利用者が感染した場合でも検査や病院受診などに対応する。さまざまな状況の対応策が事前に分かれば利用者家族の不安材料も減る」と語る。

医師との連携

 こうした体制に至るまでには、医師との連携の積み重ねがあるという。介護業者の有志と、施設支援にあたる医師と勉強会や研修を繰り返しており、活動の輪は全県的に広がっている。

 玉城課長は「赤字や倒産の危機を抱えながらも、デイサービス業者がコロナ禍の中で奮闘している現状を多くの人に知ってほしい」と願った。
 (嘉陽拓也)

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