「米兵はオンナ、オンナと言って若い女性を捜し回っていた」。そう語るのは沖縄戦体験者の中村美子さん(88)=那覇市。沖縄戦では金武村(現金武町)のガマに避難し、4月中ごろに米軍の収容施設に収容された。本島中・南部が激しい地上戦に巻き込まれる中、早くも宜野座村の民間人収容地区で「戦後」の生活が始まった中村さんらだったが、砲弾に代わって住民を襲ったのは米兵による性暴力だった。沖縄戦を生き延びてもなお、命や人権を脅かされ続けた沖縄の女性たちの恐怖や悲しみについて、中村さんはこのほど、初めて家族に語った。
1945年3月末、中村さんは祖父母と母、きょうだい4人と共に金武村のガマに避難した。米軍の攻撃に遭い気を失う経験を経て、死の恐怖を感じたが、4月中ごろには全員で投降した。
宜野座村の民間人収容地区にある母の実家で「戦後」が始まった。当初は食料やたばこなどを与える米兵を「いい人たち」と感じていたが、安心したのはつかの間。「米兵が若い女性を捜して毎日来るわけ。チーチー(乳)、オンナ、オンナと言いながら家に土足で入ってきて、親戚のおばさんの胸を触ろうと着物の中にいきなり手を突っ込んできた。怖くて怖くて震えた」
銃を携えて3人一組でやって来る米兵におびえ、女性たちは顔に炭を塗りたくりあえて汚くし、ニクブク(わら袋)の中などに身を隠した。中村さんも米兵が来ると分かると、当時30代の母を家の天井裏に隠した。米兵は若い男性や騒ぐ住民を見つけると容赦なく発砲した。
ある日、作業場に向かう住民の列の中にいた若い女性が米兵に連れ去られる様子を中村さんは目の当たりにした。「風のようにさっと一瞬で引っ張られて山に連れて行かれた」。帰ってきた女性の服は汚れていたという。「その時“強姦”という言葉を初めて聞いた。当時私は11歳で生理も始まっていない頃だよ。そんな子どもが強姦という言葉を知ったんですよ」。中村さんは語気を強めて語った。
今、ウクライナでもロシア兵らによる性暴力が相次いで報告されている。中村さんはニュース映像を見ると「同じことを繰り返しているさ」と胸が痛むという。「とにかく戦争反対」。世界中の人々が戦火や暴力におびえず安心して暮らせることを沖縄から願っている。
(赤嶺玲子)
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