米軍による沖縄での性暴力事件を調査している女性史研究家の宮城晴美さんは「米軍が沖縄に上陸した時から性暴力は始まった」と指摘する。宮城さんら「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の調査で、米軍の沖縄上陸間もない頃から各地で米兵による性犯罪が多発していることが明らかになった。
同会が当時の新聞や琉球政府の公文書、個人の体験記録や市町村史などから抽出した1945~46年の性犯罪事件の被害者数は124人。しかし宮城さんは「氷山の一角だ」と強調。「米兵による性暴力被害者は周囲からの差別を恐れて被害を隠した。被害に遭った女性が地域にいられなくなって出て行く事例もあった。被害者が責められる社会の中で表面化していない事件が数多くある」と説明する。
同会が作成した資料によると、1945年は米軍の収容所が多い本島北部を中心に拉致やレイプが多発した。赤ん坊を抱いた母親や重傷で動けない女性までも性被害に遭っている。46年1月には「米兵の子と思われる子どもが県内各地で誕生した」。収容所から居住地に帰った住民は洗濯や畑仕事の最中に突然、性犯罪に巻き込まれた。
復帰50年がたつ沖縄に今も多くの米軍基地があることや、ウクライナでも性暴力が起きていることを踏まえ、宮城さんは「軍隊がいる場所では必ず性犯罪が起きる。男らしさや暴力性が要求される軍隊では、下級兵士の暴力は自分より弱い者に向けられ、女性や子どもが犠牲になる。この構造は時代や地域が違えど変わらない」と述べた。
(赤嶺玲子)
「オンナ、オンナ」女性捜し回る米兵、家に侵入…性暴力におびえた戦後 77年経て家族に初めて語った恐怖と悲しみ