【ちむどんどん第94話】ニーチェを琉歌に訳した伊波普猷 朝ドラ「ちむどんどん」キーワード集【ネタバレ注意】


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
伊波普猷著『古琉球』(初版)の表紙

 ちむどんどん第94話は、暢子(黒島結菜)が、復帰の日に沖縄を出てから、料理人の修行をしたイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」で働く最後の日が描かれました。厨房での仕事を終え、ワインを手にこれまでの日々を振り返る暢子と、店のオーナー房子(原田美枝子)。2人の様子を二ツ橋(髙嶋政伸)が目を細め、ときに涙し、見つめていました。その席で暢子は、披露宴で房子から送られた、店の「フォンターナ(泉)」の名前の由来となったドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉「汝の立つところ、深く掘れ、そこに必ず泉あり」に対する、自分なりの答えを語ります。それは「うちにとっての足元の泉は、家族と食べたふるさとの料理です。ふるさとの味でたくさんの人を笑顔にしたい。だから沖縄料理のお店をやりたいんです」というものでした。

 有名な「汝の立つところ-」を、琉歌(8・8・8・6調の詩)にして詠んだ沖縄の著名人がいることを知っていますか? 「沖縄学の父」と呼ばれる伊波普猷(1876-1947年)です。伊波は1879年の琉球併合(「琉球処分」)を経て、沖縄独自の風俗が排除されていく時勢の中、沖縄の歴史、風俗、言語の研究に生涯を費やします。これらの研究を網羅した「古琉球」や、組踊の詞章を記録した「校注 琉球戯曲集」など多数の著作を残しました。

 伊波は「古琉球」の再版刊行にあたって、序文の末尾にニーチェの先の言葉を加えました。そして、「深く掘れ己の 胸中の泉 餘所(よそ)たよて水や 汲まぬごとに」という琉歌を詠んでいます。伊波の詠んだ琉歌は、沖縄県公文書館の閲覧棟の石版にも刻まれています。


>>【まとめ】ちむどんどんキーワード集

▼ちむどんどんってどんな意味?

▼復帰前の沖縄、映画館と遊園地はなかった?

▼意味深な民俗学者の一言「19年の空襲で…」って?

▼「とうしんどーい!」って何? 沖縄県民には結婚式や旧盆でおなじみの曲

▼「まーさん」と言えば…ピンクと黄色のあのマーク?

☆琉球新報デジタルにご登録すると「ちむどんどん」の記事がすべて読み放題!!