沖縄知事選で「玉城氏が独立宣言」とする投稿が拡散 4年前の知事選演説を解釈 中国侵略の危機感を強調 玉城氏側は「デマ」


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 沖縄県知事選を巡り、候補者の玉城デニー氏の4年前の県知事選挙で行った演説を引用して、玉城氏が「独立宣言」したとして「沖縄を中国の属国にしたいデニー候補」「中国によって占領」などと危機感をあおるつぶやきが交流サイト(SNS)上で拡散している。短文投稿サイトのツイッターには作家の門田隆将氏や県外の市議らが投稿して広がっている。玉城氏の発言は「独立宣言」ではなく、普天間飛行場の返還や空域管理権の返還を訴える文脈での言葉だ。

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 玉城氏の発言は、4年前の沖縄県知事選で2018年9月22日に那覇市内で開かれた総決起大会での演説。普天間飛行場周辺の小学校の校庭上空を飛び続ける米軍機の存在などの実態を挙げ「普天間は閉鎖・返還だ。戦争で奪われた土地は沖縄県民に返すべきだ。わたしたちは今回のこの県知事選挙で改めて誓おう。この選挙で玉城デニーと共に日本政府からアメリカから沖縄を取り戻す。うちなーんちゅの手に取り戻す、青空を子どもたちのために取り戻す」と述べた。

▼2018年9月22日の総決起大会の動画

2018年9月23日付八重山日報本島版の切り抜きを貼り付けて誹謗中傷コメントを書き込むツイート(一部画像を加工しています)

 拡散されているつぶやきはこの中から「日本政府からアメリカから沖縄を取り戻す」との発言を動画で切り取って引用している。当時の23日付の八重山日報本島版で「日米から沖縄取り戻す/玉城氏が那覇で集会」の記事も根拠に挙げているものも多い。中には、今年9月11日投開票の沖縄知事選の中で玉城氏が発言した内容と誤認した形で拡散しているつぶやき(細野豪志衆院議員)もある。

 動画投稿アプリTikTok(ティックトック)でも「デニーは危ない」「沖縄は日本でなくなる」と動画が投稿されている。

 その中でも門田氏はツイッターで〈正体を隠す事なく玉城知事が「誓いましょう!この選挙で玉城知事と共に、日本政府から、アメリカから、沖縄を取り戻す!」と独立宣言。玉城知事再選なら沖縄県民の意思は明らか。「沖縄は日本ではない」との攻勢を強める中国に呼応する知事を沖縄県が戴くなら石垣など先島諸島は本気で長崎県への編入を〉と書き込み。8月31日夕の投稿で、3日午前0時時点で2.1万の「いいね」がつき、6677件のリツイート(RT)で拡散されている。

 本紙ツイッターアカウントから門田氏のアカウントへ、玉城氏の発言は「独立宣言ではない」と指摘し見解を求めたが、3日午前0時までに回答はない。

 玉城氏の選挙対策事務所は1日、本紙の取材に対し、拡散しているつぶやきの内容それ自体に対する評価とネット上で拡散している事態について「全くのデマで大変残念」とコメント。4年前の発言について「国土面積0.6%の本県に米軍専用施設面積の70.3%が集中している現状は公正なものとは言えない。航空機騒音被害、米軍関係者による事件・事故など基地負担の軽減について、基本的人権、地方自治権の問題として日米両政府に提起していくという趣旨が込められている」と説明した。(滝本匠)

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