沖縄県知事選挙候補者の玉城デニー氏の選挙母体「ひやみかち・うまんちゅの会」は「法定ビラ1号」やチラシで、4年前の知事選時に掲げた公約291件について全てに着手し287件を推進中として「実現率98.6%」という表現で表記している。公開討論会の場で玉城氏も同じ数字を挙げて「実現率、実行率は98.6%」と説明している。しかし、辞書などでは「実現」の意味は「かなえられること」(明鏡国語事典)とされる。推進中の公約287件を「実現率」で表現するのは不正確だ。
玉城氏を支持する共産党は8月の「沖縄県議団だより」で、知事の公約について「公約291の施策すべてに着手/287施策を推進」と記した上で「推進率98.6%」と表現している。 「精選版日本国語大辞典」は「実現」の意味として、「計画、希望などを現実のものとすること。また、そうなること」と掲げている。
中山義隆石垣市長は、20日に短文投稿サイト「ツイッター」の投稿で「世間の常識では『実現』と使うのは達成完了した時です。なので291-287=4で4年の任期中、実現したのは4施策となります」
と投稿した。この投稿に対して27日時点で9600以上の「いいね」がつき、拡散させるリツイートは3700を超えた。
コメント付きの引用ツイートは270件以上で、コメントには「4年間で4施策のみ」や「大本営発表すぎる」のほか、玉城知事と中国とを結び付けようとする書き込みもあった。
今年6月27日の県議会6月定例会の一般質問でも、玉城氏が2018年の県知事選で掲げた291件の公約が取り上げられた。
▼玉城デニー知事の公約「達成率」、県側答えず 291のうち完了8・推進中279に 県議会
玉城氏は答弁で「公約として完了した後、継続してさまざまな取り組みを進めているという項目が8、現在推進中が279となっている」と述べた。公約の「達成率」を求められ、沖縄県の儀間秀樹企画部長は「達成率という成果指標的な考え方はなじまない」と答えるにとどめた。 質問した自民の島袋大県議は、公約291件のうち完了が8件なら公約の達成率は「2.7%」ではないかと指摘した。
沖縄県によると、公約が「完了」し継続しているのは(1)那覇空港滑走路増設の早期完成(2)カジノ誘致反対(3)世界自然遺産登録の実現(4)琉球歴史文化の日の制定(5)幼児教育無償化の国への要請(6)観光基金の設置(7)少人数学級の拡大(8)那覇市内への新たな特別支援学校の設置―の8項目。
8月17日に琉球新報などが主催した公開討論会でも「実現率」と「達成率」が問われた。候補者の佐喜真淳氏が、玉城氏の公約「実現率99%」と、県議会で指摘された「達成率」を挙げて「4年間をうやむやにするような詭弁では無いか。どちらが正しい数字なのか」「結果的に達成できたのはいくつあるのか。違いを明確にすべきだ」と質問した。
ちなみに佐喜真氏は討論会の質問で「達成率は1.7%」と言及したが、上記の県議会一般質問の記事にもあるように、自民の島袋県議が指摘した「達成率」は公約291件のうち完了が8件ということで「2.7%」が正しい。
▼【公開討論会詳報④】旧統一教会問題、公約達成率、普天間跡利用…
佐喜真氏の質問に答えた玉城氏は「公約の中には実現したとしても、引き続き取り組まなければならないことがある。たとえば子どもの医療費の無料化は今年4月から中学卒業まで拡大した。
しかし事業は来年度以降も継続する。中学卒業まで上げたから終わったではなく、そこから始まるということが肝心だ。公約で大事なのは着手し推進しているということだ」と実例を挙げて説明。さらに「291の公約に対して287項目は予算化して推進している。しかしやって終わった―ではなく、そこからつながっているために、あえて『やったということ』を『実現した率』に置き換えて実現率98.6%と言っている」と強調した。
【関連記事】
▼佐喜真候補の沖縄県知事選の演説中に薬きょう投げつけ 県警、女性を任意同行
▼【相関図あり】沖縄知事選、3陣営への支援の枠組みは? 構図も複雑に
▼意外か、それとも的中? 自分の考えに近い候補は誰?知事選「投票マッチング」
▼「知事選アプリ」はコチラ ~候補者の情報、まとめて分かる~
▼沖縄知事選「佐喜真候補向け薬きょう、を報じず」は誤り<ファクトチェック>