朝ドラ「ちむどんどん」沖縄の記者が125本の記事を書き続けて今、思うこと【WEB限定】


この記事を書いた人 Avatar photo 仲井間 郁江
ドラマ「ちむどんどん」のポスターと藤村記者=9月29日、那覇市泉崎の琉球新報社

 NHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」の放送が30日、終了しました。沖縄を舞台としたドラマでしたが、沖縄を拠点とする地元新聞社「琉球新報」では毎日、ドラマの放送終了後に、ストーリーに関連したキーワードを紹介する「ちむどんどんキーワード集」という記事をニュースサイト上で発信してきました。「ウチカビ」「ウサンミ」「ナナサンマル」…全125話に合わせて出した記事も全125本。これらの記事は毎日、朝の放送終了後に1人の記者が書き続けたものでした。スムーズに「キーワード」を決められる回もあれば、なかなか書けずに「生みの苦しみ」の日も…。

 放送が終了した今、「ちむどんどんマラソン」とも言えるこの半年間を完走した琉球新報の藤村謙吾記者(暮らし報道グループ)に話を聞きました。「#ちむどんどん反省会」などSNS上での動きなどさまざまな話題を生んだ同作。沖縄の記者が感じたこと、そして続編?への提言も飛び出しました。

(聞き手=デジタル推進局・仲井間郁江)

 

―「キーワード集」をはじめようと思ったきっかけは。

藤村記者 全国的に知名度の高いNHKの連続テレビ小説の舞台が沖縄となることで、多くの人がこれまで以上に沖縄に関心を抱くと思いました。沖縄の新聞社として、ドラマと関連付けることで、より詳しく楽しく、沖縄のことを知ってもらいたいと考え、始めました。

 

―原稿をチェックするデスクをしていた身としては、日によって原稿が出てくるスピードが違い、遅い時は「今日は生みの苦しみの回かな…」と若干ヒヤヒヤしながら待つ日もありました(笑)。苦労した点は。

藤村記者 ウチナーグチや沖縄の暮らしに欠かせない行事や物などが出ている回は比較的記事も書きやすかったのですが、そうではないストーリーの時は、目を皿にして、背景やセットを見たり、出てくる言葉から沖縄の人物や風習を連想してみたりして乗り切りました。

 

―半年間、毎日記事を書き続けてみて感じたことは。

藤村記者 毎日沖縄ネタを探していた身としては、脚本を手掛けた羽原大介さんに対して「1回の放送に沖縄ネタを詰め込みすぎ!もったいない!」としばしば思いました。一つの回にどっさり沖縄の料理が出たかと思えば、ほぼ沖縄が絡まない回もありましたので。そんな感じだったので、初見(朝の放送)はゆっくり味わって見るという感覚ではありませんでした。週末にまとめての放送があったので、そのときに家族と一緒にリラックスしながら見る、というドラマとしての楽しみ方もできました。放送が複数回あるという利点がこんな形で生かせるのかと感じました。

 妻と小学1年生の娘、4歳の息子と見ていてあらためて感じるのは、見る側が「沖縄」というテーマにとらわれ過ぎなければ、ドラマ自体は怒濤の展開で笑いあり、涙ありと非常に面白い作品だと感じました。脚本家の羽原さんは「パッチギ!」や「フラガール」などの映画だけでなく、「ふたりはプリキュア」などのアニメも手掛けています。子どもたちが「ちむどんどん」を見ていて、笑い転げたり、大きな声を出して暢子を応援する姿を見ていて、もしかして「ちむどんどん」はアニメのような物語構成に近いつくりなのかなとも思いました。

 

 

出演者の右から川口春奈さん、主役の黒島結菜さん、竜星涼さん、上白石萌歌さん=2022年1月、うるま市(喜瀨守昭撮影)

―思い入れのあるキーワードは。

藤村記者 第69話の「ベストソーダ」です。キーワードの説明は、主に琉球新報の過去の記事を基に書きました。「ベストソーダ」は、NHKの美術の方を取材したとき、作中に「チュラソーダ」という名で、瓶にステッカー、のぼりにまでこだわっって作った商品があるという話を聞いており、復帰前後の琉球新報をめくっていて、見つけました。おそらくこの連載をしなければ、出会うこともなかった単語だと思います。

 連載を通じ、普段沖縄での暮らしの中で当たり前のように使っていた言葉についても、実は自分自身、よく分かっていなかったことにも気付きました。特に料理については、琉球新報で「琉球料理は沖縄の宝」というシリーズを連載してくださった安次富順子先生の記事や著作を、大変参考にさせていただきました。

 

―全125回「ちむどんどん」に併走、そして完走した記者として今、思うことは。

藤村記者 ドラマと連載を通じて、多くの人に「沖縄のことをもっと知りたい」と思ってもらえたら何よりです。ただ、沖縄戦や遺骨収集などの難しいテーマも含めて、125話に「詰め込んだ」作品だなぁという印象もあります。できれば番外編などで、もう一歩沖縄に踏み込んだ作品を見たいです。

 例えば、ドラマでは一瞬で終わってしまった1972年5月15日の「暢子が上京した日」などです。沖縄が日本に復帰したとても重要な節目の一つです。沖縄では通貨交換や沖縄復帰記念式典があり、まだ道路は右側通行だったあの日を、やんばるから那覇に向かう暢子の視点で、1週間分=75分のドラマに仕立てたものをぜひ見てみたいです。

 また私は普段、琉球芸能、音楽の取材も多く担当しますが、歌子役の上白石萌歌さんの歌三線はすばらしいと感じました。今後、再び沖縄を連続テレビ小説で舞台にする機会があれば、次は芸能を主軸にして、上白石さんが琉球芸能の師匠役を務めるストーリーなんてどうだろう!と想像を膨らませています。放送が終わった今もまた新たな展開を自由に描いて「ちむどんどん」しています!

 

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【まとめ】ちむどんどんキーワード集

▼最終回、ゴリさんと西銘駿さんが出演 「賢秀、他人とは思えない」「心落ち着く現場」

▼「 #ちむどんどん反省会」などSNS上の批判に脚本・羽原氏の受け止めは? 琉球新報単独インタビュー 

▼藤村記者イチオシのキーワード「ベストソーダ」(第69話)

▼連載<琉球料理は沖縄の宝 安次富順子>1 守りたい独自の食文化 王朝で日中料理が融合、庶民の「医食同源」も根幹