【子どもの居場所】コロナ禍で変化、助け求める声増加 「次期市長、現場に積極的に足を」<那覇市長選・市民協働の現場から>上


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「のびのびひろば」を訪れる子どもたちに絵の描き方を教えるスタッフ(左)=那覇市松尾

 那覇市の中心市街を拠点とする松尾二丁目自治会は、2016年から事務所を使って子どもの居場所「のびのびひろば」を開設しており、地域の子どもたちでにぎわいを見せる。

 今年9月中旬には近隣にもう1カ所拠点をつくった。2年ほど前からは、発達に課題のある子どもも含めて毎日のように学習支援に取り組むなど、子どもたちと向き合い続けている。

 同様の子どもの居場所は、那覇市社会福祉協議会がつくる居場所のネットワークに加盟する団体だけで55カ所ある。多くのボランティアスタッフが日々、子どもたちと向き合っている。

 子どもの貧困対策を現場で支えてきた居場所は、コロナ禍で大きな変化が起きた。居場所を訪れる子どもの数は、感染拡大が続く中で一時的に大きく減少。感染拡大期には弁当の配布に取り組むなど支援体制を広げた。

 一方、経済の落ち込みが長引いた影響で保護者が仕事を失うなど、子どもを取り巻く生活環境は悪化した。のびのびひろばの與儀長次代表は「助けを求める声は増加した」と語る。

 居場所を開設して6年、学習支援を始めて約2年がたった。コミュニケーションが苦手で学校に行けない子どもなど、新たな課題に対応するため勉強会に参加するなど、ボランティアスタッフが研さんを重ねる。

 始めは学校に行くことが難しかった子どもが高校受験をクリアしたり、ウーマクー(わんぱく)だった子どもが無事仕事に就いたりと、成長を目の当たりにしてきた。與儀さんは「子どもとの向き合い方は試行錯誤が続くが、居場所の効果は出ている」と実感する。

 一方、行政の支援が「対症療法的だ」と感じている。困窮世帯に食料を配るなどの取り組みは「必要なことだが、親御さんにスキルを身に付けさせるなどの取り組みの強化も必要だ」とみる。

 学習支援に使う画材を始め、取り組みには持ち出しもある。自らの仕事の時間を割いて続けるボランティア活動に「これがずっとは続かない」と不安を口にする。

 補助金を出している那覇市への実績報告は文書が中心で、子どもたちの現状や試行錯誤といった日々の苦悩が伝わりづらいといった課題も感じている。與儀さんは「報告書だけでは見えないこともある。次期市長には、居場所の現場に積極的に足を運んでほしい」と思いを託した。
 (’22那覇市長選取材班)


 那覇市は「協働によるまちづくり」を掲げている。現場で課題解決に奔走する市民に行政はどう連携していくべきか。課題や次期市長に求められるものを探った。

 


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