沖縄を訪問中の天皇、皇后両陛下は22日午後、沖縄戦戦没者の遺族らと交流し、戦争体験者の声に耳を傾けた。炎天下、遺族一人一人と約20分かけて会話し、沖縄戦当時の状況について質問を交え、聞き取られた。夜は、沖縄復帰50周年記念式典関係者と懇談した。
県遺族連合会顧問の照屋苗子さん(86)は天皇陛下から「(沖縄戦で)どなたを亡くされたんですか」と質問された。一家5人を亡くしたことを伝え「戦争の話をするのはつらいが、戦争を知らない子どもたちに平和の尊さを伝えるため話している」と答えた。交流後の取材に照屋さんは「遺族に対しても心を寄せ、上皇夫妻の心を引き継いでいると感じた」と話した。
戦没者遺族の大城竹明さん(77)は、天皇皇后両陛下が戦後生まれとなり、沖縄に対する意識が薄れることへの心配があったという。実際に交流し「新しい天皇皇后も沖縄のことを忘れないでいてくれると思った」と安心した様子。両陛下との会話では、父が戦死した翌月に自身が沖縄戦下で生まれた状況などを話し、「戦争を知らない世代だと思うが、(沖縄のことを)よろしくお願いします」と伝えた。
沖縄は、昭和天皇の時代に激しい地上戦に巻き込まれた。現在も昭和天皇の沖縄への対応を巡って、複雑な感情を抱く県民もいる。
沖縄復帰50周年記念式典で県民代表あいさつをした対馬丸記念会の高良政勝代表理事(82)は「沖縄の人が皇室に対して良い感情を持っていないのは分かる。私も以前はそうだった」と話す。ただ、上皇さまが戦争で被災した南洋を慰霊訪問する姿を見て気持ちに変化があった。「御霊(みたま)への祈りの旅を続けてこられたと感じた。以前より県民の皇室に対する意識は徐々に変わってきている」と話した。
高良さんが両陛下に対馬丸記念館に来てほしいと伝えると、天皇陛下は「はい」と答え、笑顔でうなずいた。
(中村優希)
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