白い両手のハサミで「バンザイ」しながら食べているのは…
漫湖の干潟はカニの世界。マングローブの林の下には、片方のハサミが大きいシオマネキの仲間がたくさんいます。でも、この干潟で一番数の多いカニは、もっと広く開けた場所にいます。水が薄く残った泥干潟をよく見ると、白い両手のハサミをよいしょーっと高く持ち上げる小さなカニがいませんか?…しかも、とてもたくさん!これが、ヒメヤマトオサガニです。
このカニ、両手を持ち上げる仕草がとても特徴的で、日本人の研究者が学名に「バンザイ」という名前をつけました。ちなみにバンザイをするのはオスだけ。自分の存在を周りに主張しているのでしょうか。
バンザイを繰り返しながら食べているのは、干潟の泥に混ざる有機物です。シオマネキの仲間も有機物を食べますが、彼らはヒメヤマトオサガニよりも少し泥が乾いた固いところが好き。例えるなら、シオマネキの仲間が食べるのは普通の「じゅーしーご飯」で、ヒメヤマトオサガニは柔らかいおじやのような「ぼろぼろじゅーしー」という感じでしょうか。
さらにヒメヤマトオサガニは、水に浸かって目だけを水面に出しながら、両手のはさみで口の方に泥水をかき込むような食べ方もします。これはきっとスムージーですね。カニによって好みの泥が違うのは、口の構造の違いで、選り分けられる泥の粒の大きさが異なるからなんです。
朝、食事の終わったカニが、日光浴をしながら両手と足を上げて、不思議なポーズを取っていました。足の掃除?なんだかまるでヨガみたい。バンザイガニの朝の日課なのかどうか、また干潟を見に行こうかな。
Vol. 57 ヒメヤマトオサガニ
Macrophthalmus banzai
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:オサガニ科 Macrophthalmidae
● 属:オサガニ属 Macrophthalmus
動画撮影:
ヒメヤマトオサガニ 2022年10月9日(豊見城市 漫湖水鳥・湿地センター)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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