燃料価格の急激な上昇や円安の進行を受け、auでんき、ソフトバンクでんきなどは家庭用電気料金について、11月利用分から燃料費調整額(燃調)の上限を撤廃する。県内でauでんきのサービスを展開する沖縄セルラー電話(那覇市)によると、一般的な家庭で月約2600円の値上げになる。新電力が相次いで値上げに踏み切ることを受け、沖縄電力の電気料金プランへの契約切り替えが進む可能性もある。沖電によると、他社からの契約切り替えに関して「問い合わせは増えている」という。
au、ソフトバンクでんき
電気料金は複数の項目で算出されており、燃料費調整額はその一つ。電力会社の企業努力の及ばない燃料価格や為替レートの影響を電気料金に自動的に反映させ、電力会社の経営安定を図る。過去3カ月の平均燃料価格に基づいて決まるが、消費者保護の観点から上限が決められている。
新電力は独自に燃調を設定できるが、沖縄セルラー電話は電力の供給元である沖縄電力にならい、1キロワット時当たり3・98円を燃調の上限に設定していた。これを11月利用分から廃止し、11月の燃調は1キロワット時当たり17・06円に引き上がる。
担当者は「昨今のエネルギー価格は過去にない上昇だ。今のまま負担を続けるとサービス提供ができなくなる恐れがある」と理解を求めた。
ソフトバンクでんきも同様に燃調の上限を撤廃し、県内の11月分は1キロワット時当たり17・06円となる。
上限を撤廃しない新電力もあるが、各社ともコスト高であることには変わりはなく先は見通せない。コープでんきを提供するおきなわコープエナジー(浦添市)は上限を維持するものの、赤字幅を最小限に抑えるため、新規契約の申し込みは10月から一時停止している。
担当者は「契約者はコープの組合員が中心。消費者の暮らしを守るためには家庭用の上限撤廃は難しい」と説明する。
同じく現段階の上限撤廃を見合わせている沖縄ガスニューパワー(那覇市)の担当者は「自社で発電所を持っていることや独自の調達ノウハウがあるため価格を抑えているが、今後も上限を維持できるかは分からない。沖縄電力の動向も注視したい」とする。
燃料費高騰が経営を圧迫しているのは沖電も同様で、今年4月から燃調の上限超過分を価格転嫁できず「逆ざや」が続く。
(玉城江梨子、當山幸都)
【関連記事】
▼全国一高い!1209円の値上がり 沖縄の電気料金の上げ幅が大きいのはなぜ?
▼沖縄でも急増 値上げ前の駆け込み需要 スーパーで酒類や食品のまとめ買い