一糸乱れぬ行進に、息の合った演奏。国内屈指のマーチングバンド強豪校の西原高校が昨年7月、オランダで開かれた「音楽のオリンピック」と言われる世界音楽コンクールで、ショー部門最高峰の「チャンピオンシップ」に輝いた。開催国を抑えての優勝は初めてで「真の世界一」をつかみ取った。コロナ禍で練習もままならない中、苦難を乗り越えての栄冠獲得は、一人一人の努力なしにはなし得なかった。
部員全員が入学時からコロナ禍での学校生活。緊急事態宣言で練習ができない日が続き、部活再開後も練習時間に制限が課せられた。自宅や公園での自主練習や筋力トレーニングなどは欠かさず、部員同士で励まし合った。
部長の屋良和佳菜さんは「練習量が多いことを覚悟して入部したはずが、みんなと練習できず悔しかった」と話し、副部長の松田花さんは「マーチングがしたくて入学したのにできないことが悔しかった」と振り返る。
保護者やOB・OG、地域住民も一丸となって部員を支えた。衣装は保護者の手作りで、世界大会出場のハードルだった渡航費は、西原町や学校関係者ら有志が町内外の企業を回るなどして集めた。
大会で披露するフォーメーション(ドリル)を考えるドリルデザイナーの神山大樹さん(41)もOBの一人だ。「私生活を含めて先輩から受け継いだ『伝統力』が西原の強みだ」と語る。
世界音楽コンクールでは本選直前に宿泊先のホテルで火災が起きるなどトラブルに見舞われたが、本番では最後までパワフルな演奏ができた。「今のメンバーで世界一になれてうれしい」。一人一人の瞳が輝いていた。
文・吉田健一
写真・小川昌宏
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西原高校マーチングバンド部 1984年創部。過去には部員が100人を超える時代もあったが、2010年から「中編成」部門に出場する。現在の部員は65人。世界音楽コンクールでは97年から毎回金賞を獲得。2001年、05年、17年は開催国以外の団体に贈られる最高賞・ベストインターナショナル賞を受賞している。
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連載「夢かなう」
好きなこと自然体で 幼いころに見た夢、学生時代に追いかけた目標、大人になって見つけたなりたい自分。一人一人目指す場所は違っても、ひたむきに努力する姿は輝いている。夢をかなえた人たち、かなえようとしている人に焦点をあて、その思いを伝える。