ヒラメかカレイか…「靴底」と呼ばれることも
冬、夜の浅瀬の潮だまり。水中ライトで照らすと、ちょっと不思議な生きものの気配がありました。15cmほどの平べったい体、その周囲は波打っています。浅瀬で平べったく波打つ体といえばヒラムシ。でも、ヒラムシよりは大きいし、よく見ると目がある…。
これはサザナミウシノシタ。ヒラメやカレイの仲間です。「左ヒラメの右カレイ」と言って、体の左側に目があればヒラメ、右側に目があればカレイという見分け方がありますが、実は例外も結構あります。サザナミウシノシタは右側ですが、別のウシノシタのグループは左側。本当はどっちでも良いのかなぁ。
「牛の舌」には、別名「舌平目」と呼ばれる種類もあります。淡白な白身が、ムニエルなどの料理に使われることで有名です。ところが、英名は「靴底」…それではあまり美味しそうじゃないかも?
さて、サザナミウシノシタは成魚と幼魚で体の色が全然違います。小さい時は白い体にオレンジと黒の縁取りがあり、これがひらひら波打つと、同じ色合いのヒラムシの動きにそっくり!ヒラムシは獰猛な肉食動物で、しかも毒を持っていることがあるので、有毒種に擬態をして身を守っていると考えられています。
全然違う生きもの同士、なぜ色合いや動きを真似ることができるのか、寄り目の顔を見ながら、生きものの進化の不思議を感じました。
Vol. 60 サザナミウシノシタ
Soleichthys heterorhinos
● 目:カレイ目 Pleuronectiformes
● 科:ササウシノシタ科 Soleidae
● 属:サザナミウシノシタ属 Soleichthys
動画撮影:
サザナミウシノシタ 2023年1月6日(浦添市 伊奈武瀬)
ヒョウモンヒラムシ 2019年11月13日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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