ゆらゆら落ち葉、よく見てみると…
砂浜の先にある、小さな潮だまり。陸に近いので、海岸に生える木々の落ち葉が漂っています。そんな潮だまりをじーっと眺めていると、茶色いかけらがひとつだけ、別の方に流れて行きます。落ち葉と同じようにゆらゆらしているのに、手を近づけるとスッと逃げる。そしてまたゆらゆら。本当の落ち葉に混ざると、ほとんど見分けがつきません。これが、ナンヨウツバメウオの幼魚です。
光が当たると少しオレンジがかった茶色で、大きさはわずか3cmほど。右に左に傾きながら、漂う落ち葉そっくりの動きをしているのがすごい!これが、やがて50cmにもなってサンゴ礁を泳ぐ銀色の魚に育つとは信じられません。
さらにもう一種類、今度は枯れた海草のかけらのような魚も見つけました。ヘコアユの幼魚です。この潮だまりにいたのは、まだ1〜2cm。成魚は15cmほどになります。海草のかけらは、茶柱のように縦に浮かんで漂いますが、ヘコアユが頭を下にして、立ち泳ぎをしながら群れで漂う様子は、海草の枯れ葉によく似ています。これも手を近づけるとスッと逃げるので、ようやく魚だと気づきます。
海藻が切れて漂う流れ藻に隠れる生きものは多いけれど、ナンヨウツバメウオの幼魚のように、陸からの落ち葉に擬態する魚がいるなんて、魚もなかなかやるもんですね。
Vol. 33 ナンヨウツバメウオ
Platax orbicularis
● 目:スズキ目 Perciformes
● 科:マンジュウダイ科 Ephippidae
● 属:ツバメウオ属 Platax
動画撮影:
ナンヨウツバメウオ 2020年10月2日(浦添市 西海岸パルコ前)
ヘコアユ 2020年10月16日(浦添市 西海岸パルコ前)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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