「聖職者」イメージ根強く…「子どもに尽くすもの」の呪縛<先生の心が折れたとき 教員不足問題>第1部番外 読者や教員からの声


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 懸命に業務をこなそうとするほど、心身を疲弊させていく教員たち。本連載で取り上げた現場のケースはいずれもこなしきれない仕事量が病んでしまう背景にあった。読者からは「学校で現状を訴えたらいいのではないのか」との疑問も寄せられた。実情をどうにか訴え、改善できないかともがく教員もいるが「生徒第一が当たり前」「自分の事情を持ち出すなんて」と聖職者のイメージは学校現場でも根強く、我慢を強いられている状況もある。

 ■「本音言えない」

 精神疾患で病休中の中学校教員の女性=30代、中部=は業務の軽減について「本音を言うのはとても難しい」と吐露する。「先生の業務は、全て子どもたちのためのもの。だから業務軽減を訴えると、子どもを思う気持ちが弱いと思われてしまうという雰囲気がある。保護者に誤解されたくない。それ以上に、生徒にそう伝わってほしくない。先生は自分のことを大事に思っていないと思われてしまう」

 南部の小学校に勤務する女性=30代=は「何も言わないのはよくない」と、以前はSNSで仕事のつらさを吐き出していた。しかし特定されることを恐れて、最近投稿をやめた。「教育現場がブラックだと全国でもずっとニュースになっている。でも改善の兆しが見えない」と諦め口調だ。

 「先生は子どもに尽くしてくれるもの」。そんな教師像のイメージは保護者にも根強い。激務ぶりは、改善しづらい学校の現状と合わせて、親たちにも理解されていない。

 「先生の勤務時間について考えたことがない」という小4の娘がいる那覇市の女性(40)。「子どもの担任を見ていて、忙しそうとは思っていた。でも先生ってそういうものだと、あまり真剣に考えたことがなかった」と明かす。

 宿題が採点されず、チェック印だけの日が続いた時に不満を感じたこともあった。連載を読み「家庭教育の一部を学校に任せていたかもしれない」と感想を寄せた。

 ■教員志望の学生

 教員志望だった県内大学4年の女子学生(22)は、1年ほど前に教員採用試験の勉強をやめ、民間企業への就職活動に一本化した。「志望教科は募集人数が少なく、ストレートで通る自信がなかった」。ただ、いつかは県内で教員になる未来図を描く。教員の現状は知っているが、本来は魅力的な仕事と諦めていない。「学校以外の経験も積んでおいた方が、生徒の進路相談にも強くなれると思う」。今春、関東地方の民間企業に就職する。

 教員を目指して大学受験に臨む高校生もいる。小学校で教壇に立つ夢を持って沖縄大学のこども文化学科を受験する女子生徒(18)は、父親が教員。父親は反対するが「父親が働いている学校についていったとき、生徒たちがたくさん寄ってきて楽しそうだった。家でもよく生徒の話をうれしそうにしている。ブラックな印象が強いけど、改善されれば感動の多い、いい仕事だと思う」と希望を抱く。
 (嘉数陽)