高水温で育ったサンゴは多産、さらに子は熱に強い…琉球大が研究成果を発表 沖縄


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サンゴ礁を形成するミドリイシ属のウスエダミドリイシ=2020年1月23日、本部町瀬底(守田昌哉・琉球大准教授提供)

 高い海水温にさらされた親サンゴは卵をたくさん生み、その卵から育った子サンゴも熱に強くなる―。琉球大の大学院理工学研究科で学ぶイランからの留学生サナス・ハズラティ・カリさん、熱帯生物圏研究センターの守田昌哉准教授らのグループが23日、サンゴの繁殖戦術に関する研究結果を発表した。

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 沖縄海域は近年、台風が少ないために海水温が高くなり、日本最大のサンゴ礁「石西礁湖」をはじめ白化現象の進行が危惧されている。

 グループは高水温下でのサンゴの繁殖を研究するため、サンゴ礁を形成するミドリイシ属の一種、ウスエダミドリイシに着目。2018~19年、本部町瀬底の研究施設近くでサンゴの一部を採取し、海水の平均水温(27.5度)と高水温(31度)にさらして、繁殖状況を比較した。

 結果、高水温にさらされた親サンゴが生んだ卵の体積は平均水温と比べると平均28.6%小さくなった一方、生んだ卵の数は平均24.1%増えた。また、高水温にさらされた親サンゴが生んだ卵から育った子サンゴ(幼生)の生存率は平均水温と比べると約20ポイント高くなっていることが分かった。

サナスさん(提供)
守田昌哉准教授(提供)

 守田准教授は「サンゴは数万年単位で絶滅と回復を繰り返してきたとされる。サンゴが高水温に対応し、次代に生き残るすべを獲得してきたことが明らかになった」と説明。サナスさんは「沖縄のサンゴ礁と生態系は世界に類を見ない多様な種で形成されている」と希少さを強調した上で「今後は高水温下で子サンゴがどのように成長していくのか、親サンゴがどのように生き残っていくのか、研究を進めていきたい」と述べた。

 研究結果は国際的な英文学術電子誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」の22年12月15日付に掲載された。
 (安里周悟)


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