2021年1月に沖縄県立コザ高校2年の男子生徒=当時(17)=が自ら命を絶った問題で、生徒が自死したのは部活動の元顧問のパワーハラスメントが原因などとして、遺族が9日、県側に約1億3900万円の損害賠償を求め那覇地裁に提訴した。
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生徒は運動系の部活に所属し、キャプテンを務めていた。訴状によると、元顧問は生徒を叱る際に「気持ち悪い」、「キャプテンを辞めろ」などと発言。部活動外の時間に雑用を強要したり、携帯電話で緊急ではない連絡や指示をするなどした。元顧問による暴言を伴う激しい叱責で、自死を選択せざるを得ない心理状態になったとし「元顧問の不法行為がなければ、生徒が自殺の決断に追い込まれることはなかった」と主張した。
提訴後、遺族側代理人の池味エリカ弁護士らが那覇市内で記者会見。「提訴したのは、県に『指導死』による息子の死を認めてもらいたいという気持ちからだ。一人の指導者からの暴言や侮辱も明らかな体罰だということ、指導という名の執拗なパワハラがあったときちんと認めてもらいたい」などとする遺族のコメントを読み上げた。
会見で代理人弁護士が読み上げた遺族コメントの要旨は次の通り。
沖縄県に対する民事訴訟を提起したのは、県に「指導死」による息子の死を認めてもらいたいという気持ちからです。一人の指導者からの暴言や侮辱も明らかな体罰だということ、指導という名の執拗なパワーハラスメントがあったことを認めてもらいたい。コザ高校と管理職、県教育委員会にも責任があり、全面的にその責任を認めてもらいたい。
息子は、理不尽な暴言や人格否定と取れる侮辱的な暴言を浴びせられ、追い詰められ、限界状態になっていきました。高校総体連覇が懸かっているとして、学校全体からプレッシャーをかけられていました。元顧問は以前から問題行動があったにも関わらず、管理者から適切な指導がなされていませんでした。
私たちは訴訟を通し、息子が生きた証しや尊厳を守りたい。17歳という短い人生の大半を県代表として頑張ってきた息子の努力や苦悩に、目を背けず向き合ってもらいたい。つらい気持ちを押し殺して前向きに頑張ってきたことが認められず、さぞかし悔しかった、無念だった、孤独であったと思います。
楽しそうに笑いながら部活の話をする笑顔が消え、「なんで俺ばっかり」「小さいことが積み重なって」とつぶやき、部屋にこもることもありました。亡くなった後、スマホのラインに私たちが知らない内容が残されており、がくぜんとしました。息子に全て責任を仕向けるような発言は、本人を精神的に追い込む内容としか思えませんでした。
温厚で友だち思いの優しく、懐の大きい息子でした。部活を引退して車の免許を取って、大学に行って、好きなことをたくさんできる充実した人生だったのだろうと思うとやりきれない思いでいっぱいです。
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