国の基準、実態と大きな差 沖縄独自の少数人数制は考慮されず<先生の心が折れたとき>第2部③教員定数


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 就業時間内に終えることができないほどの業務量、改善が進まない働き方改革の中で増え続ける精神疾患の病休者、それらを背景にした教職志願者の減少、人手不足で業務を代行する教員らの負担が増して病休につながる―。教員不足の問題は負の連鎖に陥っている。業務過多を招く原因には、社会情勢に応じて学校に求められる業務の増加だけではなく、そもそも配置される教員が少ない「教員定数」の問題がある。教育現場を支える教職員からは教員数増を訴える声が上がっているが、国の教員定数改善計画は2005年で終了したまま、現状に合わせた改定は進んでいない。(嘉数陽)

 教員の配置数は、国が決める「教職員定数」に大きく左右される。国は独自の算定方法で各県の定数を割り出し、定数に応じた交付金を配分するが、算定では沖縄が実施している少人数学級制は考慮されない。国が算定した定数と、沖縄で実際に必要となる教職員数には大きな差が生じることになる。

 国が算定する教員定数が少なければ各県に配分される交付金の額も少額になるため、各県は実際に必要な教員数の確保が難しくなり、人件費の低い非正規依存に陥りやすい構造も生まれる。

 学校の働き方改革と同様に国の教員定数改善も指摘され続けているが、定数改善計画は2005年で終了したまま進んでいない。

一律の算定方法

 教職員定数は公立小中学校の場合は「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」(通称「義務標準法」)、県立高校も同様の法に基づいて文科省が算定する。算定した教職員の給与のうち3分の1を義務教育費国庫負担金として県に交付し、県はそれを受けて最終的な教職員数を決定する。

 算定で、国は国基準の学級編成による学級数を基に定数を計算する。国は小1~小4が35人、それ以外は40人を定員として学級編成している。

 一方、きめ細かい指導を目的に少人数制を実施する沖縄は、小1・小2は30人、小3~中3は35人で編成する。例えば小学1年生で70人の児童数の場合、他県は2クラスの編成になるが、沖縄は3クラスで編成する必要がある。沖縄は1クラス分、教員が多く必要になるが、国の算定では考慮されない。

 国は特別支援学級についても、国で定めた定員8人を基準に算定する。学校現場で、同じ障がいでも子どもたちの特性などに応じて、定員に満たなくても学級を分けた場合、国は同じ障がいであれば、実際は学級が複数に分かれていたとしても、8人編成した場合で算定する。

 国の算定から漏れた教職員の人件費などは必然的に各県が負担することになる。

続く予算削減

 教員定数の改善は長年求められていて、2005年度まで7次にわたって教職員定数改善計画が策定された。しかし小泉政権下で行財政改革が進められた06年度予算編成以降、策定されず改善が進んでいない。教員の定数を増やすためには予算も必要となるが、文科省の予算は少子化を背景に削減されている。

 各県に配分される義務教育費国庫負担金の推移を見ると、2011年度に比べて23年度は450億9600万円減っている。

 文科省は義務教育費国庫負担金について「義務教育に対する国の責任を果たすと同時に、この制度を通じて全国すべての学校に必要な教職員を確保し、都道府県間における教職員の配置基準や給与水準の不均衡をなくし、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られている」と説明する。しかし予算は削減され、定数改善が進まない結果、全国的な教員不足が問題となっている。

 沖縄では担任不在のために子どもたちが他の学級に統合された例が、県が把握しているだけで21件(1月26日時点)発生していた。必要な教職員を配置できず、子どもたちが平等に義務教育を受けられない事態に陥ってる。