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制度だから…と「失業」、職場を転々…「女性活躍」とほど遠い行政の現場 非正規公務員7割超が女性の沖縄


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「会計年度任用職員・非常勤職員報酬明細書」を手にする那覇市の会計年度任用職員の女性=3月、那覇市

 「女性活躍」「安定雇用」の旗振り役となるはずの自治体が、自ら雇用が不安定な女性を多く生み出している実態が、琉球新報の調査で浮き彫りとなった。県や那覇市で会計年度任用職員として働く女性たちから話を聞くと、不可解な制度が生み出す「雇用の不安定さ」に憤る声が上がった。

▼「官製失業?」会計年度任用職員の回数制限、自治体で違い 市部では厳格、町村は「なし」も

 

 「これは『官製失業』ですよ」

 県の会計年度任用職員として3年間働いた50代女性は語気を強める。専門的な技能を生かし、独自性のある事業の推進に尽力してきたが、「再度の任用」の回数制限に阻まれ、3月末で退職することが決まった。「職場の規則を守らないとか仕事の能力がないとか、自分に非があるなら文句はない。だけど『制度だから来年度はない』というのはおかしい」と憤る。

 会計年度任用職員の任期は主に1年。2、3年目は雇用の「延長」ではなく、「再度の任用」という考えを採る。そのため、同じ人を次の年度も任用したいと現場が考えても、形式的に「公募」が行われる。40代の女性は「また履歴書を出して面接するというのは胸が痛い。志望動機や長所、短所を聞かれるけれど『もう分かっているでしょう?』と思う」と複雑な心境を吐露する。

 任用回数の限度を迎えた職員らは、別の部署やほかの自治体の仕事に就く。中には、限度を迎えるたびに職場を転々とする人もいる。別の40代女性は「同じ部内だと職種が別でも受けられないという縛りがある。これだと経験を生かしたいのに生かせない。市町村ごとに制度がばらばらで、統一されていないのも不思議だ」と首をかしげる。

 那覇市で会計年度任用職員として働く60代の女性は、任用の期限がある今の働き方について「能力ややりがいを搾取されている。(女性活躍や安定雇用の)旗振り役となるべき行政が制度を理由に人を切るのはナンセンスだ」と訴える。

 十数年以上女性や子どもの相談業務に携わり、自立支援などをしてきた。蓄積や人脈があるからこそできる仕事がある。だが現状では支援する側も、常にいつ仕事を失うか分からない不安におびやかされている。「自分自身が安定していないと、人を支えることは難しい。今の制度では、経済的にも精神的にも自立した生活はできない」と言い切る。「『女性活躍』と言われても、低賃金で雇用の不安があると、今後の展望が持てないし、自己投資もできない。正規職員も一緒にこの問題を考えないと社会は変わらない」と話した。
(嶋岡すみれ、稲福政俊)


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