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国庫負担減で非正規増 正規率、全国平均より11ポイント低く<先生の心が折れたとき>第2部(6)正規率の低下


国庫負担減で非正規増 正規率、全国平均より11ポイント低く<先生の心が折れたとき>第2部(6)正規率の低下
この記事を書いた人 Avatar photo 古堅一樹

 県内の公立小中学校教員の正規率(教員定数に占める正規雇用の割合)は全国で最も低い。県教育委員会は正規率の改善計画を作成して向上に取り組むが、低下傾向は続き、歯止めはかかっていない。国が進めてきた教育制度改革なども含め、非正規雇用の教員が増える背景や学校現場への影響、改善に向けた視点などについて探った。

 県内公立小中学校教員の正規率は、全国で最も低く、その状況が少なくとも10年続いている。県教育委員会によると、2022年5月1日時点の正規率は81.2%で全国平均の92.2%より11ポイント低い。小中学校教職員の給与や配置に関する国の制度変更で、構造的に非正規の教員が増えやすい状況が全国的にある。これに加え、沖縄では特別支援学級の増加も教員不足の要因の一つと考えられ、非正規教員の増加にもつながってきたとみられる。

 国は04年度、自治体に給与額や教員配置などの裁量を持たせる総額裁量制を導入した。一方、小中学校の教員給与の国庫負担制度は06年度、従来は2分の1だった国の負担が3分の1に減った。

裁量だけ移し

 国は1990年代以降の地方分権改革の流れで、都道府県や市町村へ自由裁量を持たせるという利点をアピールポイントに制度を変更した。しかし、国の負担を減らした上での制度変更となり、自治体にとっては財政に余裕がない中、裁量だけが移された格好だ。制度変更の仕組み上、給与水準を引き下げた分を非正規教員の増員に活用できることになった。総額裁量制導入との関連で、正規雇用より給与が低い非正規雇用が増える結果を招いている。

 元琉球大学教授(教育行政学)の佐久間正夫さんは、非正規雇用の教員が増える影響について「(期間限定の雇用となることで)教員が子どもたちと関係を築きづらく、子どもの教育を受ける権利が十分に保障されない可能性もある」と教育の継続性への支障を指摘する。「非正規教員は主任や保健主事など担当できない校務分掌もあり、正規教員に仕事が集中する」ことも挙げる。

 国の施策について佐久間さんは「経済政策で適用した規制緩和を教育にも適用する流れだ。出発点は教育改革ではない。少人数学級も実施できる自治体とできない自治体が出てくる。教育の機会均等に反する恐れがある」との見解を示した。

先進国で下位

 先進国の中でも、日本は教育費を公費で負担する割合が低い。38カ国で構成する経済協力開発機構(OECD)の調査で、各国の19年の国内総生産(GDP)に占める、小学校から大学に相当する教育機関向けの公的支出の割合は、日本は2・8%で2番目に低かった。最高はノルウェーの6・4%で、平均は4・1%だった。

 県内の教員らが学校現場の現状を訴え始めていることがもっと注目されるべきだと指摘する佐久間さん。「教員が置かれた厳しい働き方について父母をはじめ地域住民、社会に訴えて理解、共感を広げる必要がある。教育行政は、地方教育行政法に規定されているように教育関係職員の保健、安全等の確保に努めなければならない」と語った。

(古堅一樹)

(第2部おわり)