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小4自死、豊見城市側の責任認めず 那覇地裁「学校は予見できなかった」と判示 沖縄


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
那覇地方裁判所(資料写真)

 2015年10月、沖縄県豊見城市の小学4年の男子児童=当時(9)=が自死したのは同級生らのいじめが原因で、学校側も適切な対応をしなかったとして、両親が市などを相手に損害賠償を求めた訴訟の判決で、那覇地裁(福渡裕貴裁判長)は23日、学校側は自死を予見できなかったとして、自死についての市側の責任を否定した。一方で記者会見などで当時の教育長が不適切な発言をしたとして、市に計44万円の支払いを命じた。

▼市の第三者委は「いじめが大きな要因」

 福渡裁判長は判決理由で、いじめと評価し得る出来事としてズボンを下ろされたことや、カーディガンを引っ張られたことなどを挙げつつ、「苛烈で執拗(しつよう)なものとは言えず、自死までの約6カ月間に散発的に起きたもの」と指摘。学校での男児の様子なども踏まえ、学校側が自死の危険を予見できたとは認められないと判示した。

 男児の死亡後の記者会見や保護者会で、当時の教育長がいじめを否定する発言をしたとし「両親が受けていた風評被害が一定程度助長された」と認定。精神的苦痛への慰謝料の支払いを命じた。

 判決後の記者会見で、遺族側代理人の生越照幸弁護士は「児童が亡くなった非常に痛ましい事件である重大性を全く考慮していない。非常に形式的な判断だ」と批判。松森美穂弁護士は「どのような判決が出ようと息子が帰ってくることはないし、息子を失った悲しみは変わりません。判決内容に対しては、言葉が出ません」などとする両親のコメントを読み上げた。

 豊見城市は徳元次人市長、瀬長盛光教育長名で「改めて児童のご冥福をお祈りする。今後もいじめ対策を含め、子どもの健全育成のために不断の努力を続ける」などとするコメントを発表。「判決を精査して今後の取り組みに生かす。控訴については未定だ」とした。
 市の教育委員会が設置した第三者委員会は18年、自死の大きな要因の一つにいじめがあったと認めていた。

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