沖縄の山は甘くない 登山やハイキングの「道迷い」が増加 「遅くなると山の中は真っ暗に」 地域や消防、午前中の入山や正しい装備を呼び掛け


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夜間の嘉津宇岳の登山道(岸本一郎勝山区長提供)

 コロナ禍で「三密」を避けた行楽として、県内でも登山やハイキングを楽しむ層が増えてきている。ただ、比例するように軽装備のまま山に入って山中で「道迷い」となり、消防や警察が捜索などで出動するケースも増加傾向にある。国頭村の与那覇岳では4月29日に入山した男性が遭難し、翌30日に無事保護された。与那覇岳は1月にも遭難・救助があったばかり。また名護市消防本部によると、名護市の嘉津宇岳や三角山周辺では2020年1月以降、捜索や救急出動、救助などの要請が20件あり、40人を助けた。5月の大型連休を前に、地域や消防は「安全に気をつけて山を楽しんでほしい」と呼びかけている。

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 嘉津宇岳や、その周辺の山は名護市街地から近く、「比較的登りやすい」として人気で、勝山区によると、コロナ禍以降で登山者の数は増えている。特に春や秋の涼しい時期に登山を楽しむ人が多いという。

 嘉津宇岳は標高452メートルで、駐車場や展望台のある登山口から頂上まで、大人の足だと25~30分程度で登ることができる。市内の学校などが野外授業で登ることもある。その山で「道迷い」などによって、消防などの出動が増えている背景について、名護市消防本部の新垣正警防課長は、登山者の「不用意と不注意」を指摘する。

 救出された40人のうち、過半数は県内在住で名護市以外から訪れた人だった。山に慣れていないのに、サンダル履きなどの軽装で山に入る人がいるほか、午後の遅い時間に山に入り、暗くなった帰り道でルートを外れ、動けなくなるケースもあった。

 そのたびに、名護市消防や、名護署、勝山区の地域の人が山中で捜索に携わる。3者は番号を振った目印を登山ルートの木に付け、遭難を防ごうと試行錯誤している。

嘉津宇岳周辺での遭難を防ごうと活動する名護署、名護市消防、嘉津宇岳周辺地域の人ら=2022年4月、名護市(提供)

 岸本一郎勝山区長は「暗くなると、山の中は目の前にかざした手が見えなくなるほど、真っ暗になる。岩場など、危険なところもあるので装備を整え、確認しながら登ってほしい」と語った。

 新垣課長は「できれば午前中で入山するようにしてほしい」として、嘉津宇岳周辺で登山を楽しむ際、遅い時間から登ることを避けるよう呼び掛けた。新垣課長によると、山に入る際の装備として、長袖、長ズボンで登山靴が好ましい。飲み物ほか、万が一に備え音の出るベル、ライトなどを持参し、スマホなどの充電も万全にすることで、捜索がしやすいと話した。

(池田哲平)

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