バスケットボール男子の国内最高峰、Bリーグ1部(B1)の年間表彰式が6月2日に開かれ、河村勇輝選手(横浜BC)がリーグ史上初のMVP(最優秀選手賞)と新人賞のダブル受賞で注目を浴びた。一方で、レギュラーシーズンで優秀な成績を収めた5選手が選ばれる「レギュラーシーズンベストファイブ」に、初優勝した琉球ゴールデンキングスからは1人も選出されなかった。チャンピオンシップを無敗で勝ち抜いたチームからのゼロ選出には、SNSでもファンの嘆きがあふれたが、球団テーマでもある「団結の力」の裏返しだというポジティブな受け止めも多かった。分かりづらい選出過程には公平さを求める声も上がった。
B1は地区別に分かれて戦うレギュラーシーズン(RS)と、各地区1、2位とそれ以外の上位2チームが年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)がある。
年間表彰の対象はこのうちレギュラーシーズン。2016年にナショナルリーグ(NBL)とbjリーグが統合してBリーグが発足して以来、優勝チームでベスト5の選手がいなかったのは3度目で、実は珍しいことではない。
Bリーグ公式サイトによるとベスト5は「B1登録の全HC(ヘッドコーチ)・全選手および投票権を有するメディアによる投票によって表彰対象者を決定する」とある。HCとメディアには1票につき3ポイント、選手には1票につき1ポイントが与えられており、今回ベスト5に選出された選手と獲得点数は次の通り(敬称略)。
1位 河村勇輝(横浜BC)496点
2位 ペリン・ビュフォード(島根)327点
3位 富樫勇樹(千葉J)259点
4位 原修太(千葉J)135点
5位 クリストファー・スミス(千葉J)119点
次点の6位はリバウンド王にも輝いたキングスのジャック・クーリー選手(114点)だった。
ベスト5に3人も選出された千葉ジェッツは、レギュラーシーズンでリーグ新記録の24連勝や歴代最高勝率を記録して東地区を制した。西地区王者のキングスはその千葉にCSで完勝して日本一になった。ベスト5に選ばれた選手たちが賞にふさわしい活躍をしたのは大前提だが、ツイッターには驚きや嘆きの反応が並んだ。
「ベスト5にキングスいないのマジ?」
「キングスからも1人くらい入れてよー」
「納得いかない」
一方で、キングスは個人の力でゲームを支配するような「スーパーエース」がおらず、守備の堅さとリバウンドの強さ、総合力の高さが特長。個人成績などの記録には現れない強みが代名詞でもあるため、ポジティブに変換する意見も上がった。
「ベスト5が3人もいるチームに勝った。まさに『団結の力』を地でいったということ」
「ベスト5に誰1人選ばれなくても優勝してしまうキングスがすごいってことでよろしいですね」
「ここまで選ばれない中で優勝したのは逆にカッコよすぎ」
「1人の力じゃなく、スターチームでもなく、全員で、沖縄の団結の力で勝ち取ったことが証明されました」
雑誌やウェブメディアで沖縄のバスケット情報を発信している「アウトナンバー」のGMを務める金谷康平さんも「キングスは昔から突出・傑出した数字を出す選手がいない。全員で戦い、日替わりでヒーローが生まれたりする」と評する。
さらに「そういうチームは簡単には作れない。1人のスペシャルな人が引っ張るだけじゃないという、キングスのようなパターンは独特であまりない形。逆にそれ(ベスト5の選出なし)が誇れることでもあるのかなと思いますね」と語る。
今回の年間表彰に関しては、ベスト5やMVPの選出過程がファンの間で物議を醸した。Bリーグの島田慎二チェアマンは反響を受けて、投稿サイト「note」で記事を更新した。
「毎年、大なり小なりこのような議論は巻き起こると思います。ファン・ブースターの想いがあふれるところなので理解できます」として選考方法の詳細を説明。
ベスト5選出についても触れ、「このAWARDは、あくまでもレギュラーシーズン60試合でのパフォーマンスを讃えるものです。どうしてもファイナル直後の開催なので優勝チームから多数選出されていないと違和感を持たれる人も多いと思います。また、この評価もレギュラーシーズンが終了してすぐに実施しています。つまり、ポストシーズンの活躍と完全にわけた設計となっております」とした。
HC、選手、メディアによる投票で決まるベスト5。だが、Bリーグはそれぞれの有権者数や投票数の内訳を公開していない。投票権を有するメディアに関しては、琉球新報の問い合わせに「日ごろの取材実績等からB.LEAGUEおよびB1クラブが認定しております」と回答した。
「アウトナンバー」も投票権が付与されていないメディアの一つ。GMの金谷さんは「僕らは僕らで好きにやるから気にしない」と笑いつつ、「地域に偏りがある印象はある。投票の仕組みに構造上の問題があるとは思います」と指摘する。
キングスからBリーグでベスト5に選出されたのは2021-22年のドゥエイン・エバンス選手(現広島)のみ。MVPはまだ誰も選出されたことがない。
6月9日時点で既に「ミスターキングス」岸本隆一選手やリバウンド王ジャック・クーリー選手、絶対的エース今村佳太選手らの契約継続が発表され、来季もリーグをけん引するチームであることは間違いない。
金谷さんは「Bリーグが始まって以降7シーズン、誰かに依存するのではなくみんなで戦うというカルチャーがキングスにはできている。安定して上位に食い込んでくると思うし、十分連覇のチャンスがある」と言う。
Bリーグ史上2チーム目の連覇、そして来季は個人表彰も見据え、「王者」たちの進化に目が離せない。
(大城周子)
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