足をもぞもぞ動かして素早く砂の中へ
私たちは朝起きて、ご飯を食べて、活動して、夜は寝ますね。夜行性の生きものは昼夜が逆転するけれど、やっぱり休憩時間があります。では、海の生きものはどうでしょう?特に、潮の満ち引きがある潮間帯は、昼と夜の変化以上に、水があるかないかという、とても大きな変化があります。満潮と干潮はだいたい6時間おきで、1日に2回ずつ。そんな場所では、ゆっくり寝ていられないですね。
そんな砂浜で、波に揉まれて暮らす生きものがいます。ナミノコガイ、という小さな二枚貝です。砂浜では、下の方はずっと海の中だし、上の方はずっと干上がったままなので、潮につかったり干上がったりする砂浜の真ん中あたりだけにいます。干潮を過ぎて、やがてナミノコガイがいるゾーンに波がかかって来ると、時折砂の上に、自分からぴょこん、と飛び出してきます。そして、次の波に乗って砂の上をすーっと滑り、止まったところで素早く足を出して砂の中に再び潜る、という動作を繰り返します。まるで波乗りサーフィンをする貝!
これは、波に巻き上げられた細かいものを、水管から吸い込んで食べているのだと考えられています。波乗り時間がお食事タイム、それ以外の時は、満潮の時は水中の砂の中、干潮のときは干上がった砂の中で、じっと次の波乗りタイムを待っているのかな。優雅なのか、落ち着かないのか、ゆっくり寝る時間があるのか?一度貝に聞いてみたいものですね。
Vol. 68 ナミノコガイ
Latona cuneata
● 目:ザルガイ目 Cardiida
● 科:フジノハナガイ科 Donacidae
● 属:ナミノコガイ属 Latona
動画撮影:
ナミノコガイ 2023年9月5日(うるま市 石川ビーチ)
しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。