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【記者解説】沖縄県の行政手続き、県民感情と温度差 糸満の鉱山開発巡る農地転用許可 遺骨混入、県も確認を


【記者解説】沖縄県の行政手続き、県民感情と温度差 糸満の鉱山開発巡る農地転用許可 遺骨混入、県も確認を 糸満市米須の鉱山=2021年7月(小型無人機で撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 

 糸満市米須の鉱山開発を巡り、沖縄土石工業が申請した農地転用申請を県が許可したのは県民感情に寄り添った判断とは言いがたい。市民や沖縄戦遺族がここまで取り組んできたのは採掘場のある地域にまだ遺骨が埋もれている可能性があるからだ。

 沖縄戦の激戦地から遺骨の混ざった土砂が辺野古の新基地建設の埋め立てに使われないよう、市民らは署名運動などをしてきた。全国的にも関心を集めたが、通常の行政の手続きとして進めてきた県と市民感情の温度差は大きく映る。申請を許可する前に沖縄戦遺族への説明や公聴会の開催を求めた市民の要請に対しても、県は「対応を検討中」と保留にしたままで許可を通知した。

 県は今後、赤土防止条例に基づく事業届出行為書の審査や、文化財保護法により道路建設工事に立ち会う。現場が国定公園内にあるため自然公園法に基づく工事現場の確認も予定されるが、いずれも法令に基づく届け出の通りに工事が行われているかを確認するもので遺骨の土砂混入を確認する手続きではない。沖縄土石工業はこれまで、採掘した琉球石灰岩に「遺骨は混ざらない」と主張している。県と同社が公害等調整委員会で合意した和解案では遺骨が見つかった場合に採掘作業を中断することになっている。県にも遺骨の混入確認ができる体制構築が求められる。
 (慶田城七瀬)