玉城デニー知事が本年度から展開する県独自の「地域外交」で最終的に実現する成果目標を示す「主要指標」に「県平和祈念資料館の入館者数」が設定されており、有識者から違和感を唱える声が上がっている。県庁内からも同指標は「課題」との声が上がるなど、現状ではそこに至るまでの戦略や道筋が十分に議論されていない。
玉城知事は5月の会見で県の地域外交の最終的な目標について「ゴールは世界平和。それくらい大きいこと」との認識を示した。
県は2022年度に始まった第6次沖縄振興計画の実施計画で、各政策の成果を定量的に検証する手法を導入した。この一環で基本施策「アジア・太平洋地域の平和構築に貢献する地域協力外交の展開」の主要指標に平和祈念資料館の入館者数増を設定した。
この基本施策を実現するために、国際機関の誘致に向けた関係者との意見交換や平和推進に関するシンポジウム開催などの取り組みを実施することになっている。
長年、県の企画政策業務に関わる一般社団法人ニュー・パブリック・ワークス(東京)の上妻毅代表理事は「今後、県が展開していく地域外交は多角的・多元的で、分野も多岐にわたるはずだ。この主要指標は適切だろうか。何を目指し、何を意図して推進するのかが庁内で十分整理されていないのではないか」と疑問を呈した。
一方、別の基本施策「子どもの貧困の解消に向けた総合的な支援の推進」では、「沖縄子ども調査」による困窮世帯の割合減少を主要指標に位置づけており、解消するべき課題と成果の関係が理解しやすい。
昨年度に地域外交の主要指標を設定した県女性力・平和推進課は「どの主要指標を設定するか難しかったが、コロナ禍で来館者数が落ちこんでいることもあり、平和を希求する『沖縄のこころ』を内外に発信する平和祈念資料館の来館者数とした」などと説明した。
4月に発足した地域外交室の玉元宏一朗室長は「個人的には今の主要指標には課題を感じる。将来的には地域外交室で部局の枠を超えた大所的な指標を検討できるかもしれないが、現状では所掌がない。今後、庁内で検討したい」と話した。
玉城知事は独自の地域外交の一環で、18日からスイス・ジュネーブを訪問し、国連人権理事会に出席して過重な基地負担を国際社会に発信した。
(梅田正覚)
【記者解説】玉城知事の肝いり「地域外交室」体制整わず 主要指標のあり方など再検討が必要
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