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【記者解説】玉城知事の肝いり「地域外交室」体制整わず 主要指標のあり方など再検討が必要


【記者解説】玉城知事の肝いり「地域外交室」体制整わず 主要指標のあり方など再検討が必要 今月15日に開いた県地域外交推進本部の初会合であいさつする玉城デニー知事(左から2人目)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事肝いりの「地域外交」は、現状では庁内でビジョンが共有されておらず、生煮えの状態で進んでいる。政府は昨年12月に安保関連3文書を改定して、南西諸島の自衛隊を大幅に強化する方針を示した。玉城知事は沖縄が紛争に巻き込まれる可能性が高まったとして、今年4月に県知事公室に地域外交室を発足させ、県独自の取り組みを本格化させた。ただ、スピード感を持って取り組みを進めただけに庁内の推進体制が整っていない。

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 地域外交室は各部局にまたがる海外事務所や交流行政などの所管を横断的にまとめる司令塔的役割が期待される。ただ本年度の人員は数人で、当面は「県地域外交基本方針」(仮称)の策定に向け議論を進めている。24年度には「課」に昇格するが、県独自の地域外交の具体的な戦略策定はこれからだ。

 現在の地域外交の主要指標は平和行政を所管する子ども生活福祉部女性力・平和推進課が設定した。都道府県が地域の平和構築を目指す場合、現実的な取り組みは地域間の結びつきを強めることだろう。地域外交の主要指標は経済や交流の促進に関する覚書(MOU)締結件数などが考えられるのではないか。

 県の企画政策業務に関わる「ニュー・パブリック・ワークス」の上妻毅代表理事は「県の地域外交に期待されているのは、国家とは異なる当事者として沖縄独自の平和構築の役割を発揮することではないか。県独自の地域外交を振興計画ベースの成果指標の枠組みに当てはめる必要があるのか議論が必要だ」と指摘する。地域外交の成果を定量化することがそもそも適切なのか。再検討する必要がありそうだ。 (梅田正覚)