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民具で沖縄の暮らし伝える私設博物館!?【島ネタCHOSA班】


民具で沖縄の暮らし伝える私設博物館!?【島ネタCHOSA班】 かつて沖縄で使われていた民具が館内にぎっしり
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

沖縄市に「諸見民芸館」という私設の博物館があることを最近知りました。50年以上の歴史があり、かなりの展示数を誇るそうです。どんな収蔵品があるのか興味があります。ぜひ調べてください。

(那覇市 オッサン・ホーク)

そんな歴史のある博物館があるとは驚きです。さっそく調査を開始しましょう。

収集数は5万点以上

壁に陶片などを埋め込んだ民芸館の建物もユニーク

沖縄市諸見里の住宅街にある諸見民芸館に到着すると、館長の伊禮信吉さんが出迎えてくれました。まずは中を見せてもらうことに。入り口の扉を開けると、別世界が広がります。床面積180平方メートルの3階建ての建物全体を使い、古陶器、民具、貨幣、農具、生活雑貨、古銭、戦争遺品、琉球漆器、玩具、看板など、かつて使われていた品々がテーマごとに展示されています。収蔵数を聞くと「倉庫にあるものも含めて約5万点あり、80パーセントは沖縄関係が占めています」と伊禮さん。研究者や学生が訪れるというのも納得です。

館長の伊禮信吉さん。手に持つのは2013年に発刊した「琉球の古陶集」
館長の伊禮信吉さん。
手に持つのは2013年に発刊した「琉球の古陶集」
米軍の水タンクで作った泡盛の蒸留器
米軍の水タンクで作った
泡盛の蒸留器

民芸館が開館したのは1971年。銭湯経営や土木作業用の機材を所有する実業家だった伊禮さんの父・憲一さん(故人)が私財を投じて造りました。民具に関心があった憲一さんは、実家にあったものから集め始め、親戚や知人からも譲り受けるなどして収集してきたといいます。10年ほどでコレクションは約1500点に膨れ上がり、博物館を建設することに。焼き物などの破片が埋め込まれた壁や赤い瓦屋根の建物は開館当時かなり目立っていたといいます。

生活用具を後世に

父親の死後、88年に館長を継いだ伊禮さんは「父は時代が変化していく中、民具がなくなってしまうのではないかという危機感があり、どうにか残したいという気持ちがあったようです」と振り返ります。開館当時23歳だった伊禮さんも父親と同じく民具が好きで、後世に伝えたいという思いを抱いていました。開館後は収集活動に励んだといいます。「民芸館の建物が大き過ぎて1500点ではまだ物足りない感じだったので、弟と県内の各地に行きました。最初は北部を中心に何年かかけていろんな集落を訪ねて、昔の民具を譲ってもらい、ある程度集めた後は離島も全部回りました」。さらにコレクションは増え、20年程で館内を埋め尽くすまでになっていったそうです。

磁石式の電話、交換機などの電話機やラジオなども並びます
磁石式の電話、交換機などの電話機やラジオなども並びます

同館では「琉球・沖縄の古地図展」「金工品関係コレクション展」「電信・電話の変遷史展」などの企画展も開催し、未公開品も展示してきました。2013年には750点の焼き物の写真を紹介した「琉球の古陶集」も発刊。文化財級の古陶器などもあり、県内の博物館などにコレクションの貸し出しも数多く行ってきたそうです。

ホラ貝に柄を付けた湯沸かし

沖縄の貴重な資料の多さに圧倒された調査員。「50年集めてきて、他の博物館にないものもたくさんあるので、そこが見せ場ですね。民俗の歴史を知りたくて、本物の資料を見たいなら、ある程度のものはあるはず」と伊禮さんは話します。普段なかなか見ることのできない沖縄の歴史文化が詰まった民芸館。貴重な先人の暮らしを垣間見ることができる空間にタイムスリップしてみませんか。

(2023年11月2日 週刊レキオ掲載)

諸見民芸館

沖縄市諸見里3-11-10
TEL 090-9789-9289
開館時間:10時~17時
休館日:月曜
入館料:大人300円、中・高校生200円、小学生100円
※不在の場合もあるため、来館の際は事前連絡を