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DV防止と自立支援 身近な人を大切に 野崎聖子(うむやす法律会計事務所代表、弁護士) <女性たち発・うちなー語らな>


DV防止と自立支援 身近な人を大切に 野崎聖子(うむやす法律会計事務所代表、弁護士) <女性たち発・うちなー語らな> 野崎聖子
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 1月のコラムは父に「カタカナばかりで難しい」と言われた(反省)。その父も「DV(ドメスティック・バイオレンス)」という単語は知っている。DVの社会的認知が進み、相談機関や警察への相談件数は全国的に増加傾向が続いている。暴行・傷害の罪で逮捕される加害者も増えた。暴力だけでなく、経済的虐待、メール・SNSを利用した嫌がらせなどDVの態様はさまざまであり、昨年、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)が改正され、DV対策が強化された。

 職業柄、多くのDV事案をみてきた。ある女性は、夫からの暴言・暴力に耐えかねて3人の子を連れて家を出た。日中の仕事だけでは生活が成り立たず、子どもたちを自宅に残して時給の高い深夜帯にコールセンターで働き始めたが、電気料金が払えずに家族4人でローソクを囲むことが度々あった。それでも女性は夫の元には絶対に戻りたくないと言い、懸命に働いて子どもたちを育てていた。

 DV被害者は同時に経済的弱者であることが多い。自分を取り戻すために勇気を出して一歩を踏み出しても、別居・離婚の後に経済苦という現実が立ちはだかる。子育て中はより深刻で、実際に離婚後の母子世帯の貧困率は高い。

 沖縄県はDV防止法に基づく基本計画の基本目標の一つに「被害者の自立を支援する環境整備」を掲げ、就業や住宅確保の支援、子育て支援などに取り組んでいる。県内各市町村にもDV被害者を保護し自立を支援するさまざまな施策がある。被害者支援の現場では、女性相談員が一人一人の被害者から丁寧に話を聞き、課題を共有し、関係機関と連携・協力し、寄り添い励ましながら被害者の自立に向けた支援をしている。女性相談員の存在に救われた被害者も多いと思う。

 草の根の支援も広がっている。県内では多くの個人や団体が寄付やボランティア活動を通じて困窮世帯への食糧・食事支援を行っており、「食」以外で女性の自立に向けた支援を行っている企業もある。

 もちろん被害者支援だけではない。那覇市は「加害者にも、被害者にも、傍観者にもならない」を目標にし、DV防止を目的とした人権教育や意識啓発活動にも取り組んでいる。

 ただ、DVは加害者の加害認識(罪の意識)が薄いことが多く、家庭内の閉ざされた空間で発生するため発見が困難で、周囲も気づかないうちにエスカレートし被害が深刻になりやすい。だからこそ、今後もこれまでのDV防止や被害者への自立支援の取り組みを今後も継続するとともに、さらに深化させることが必要だ。

 人は近しい間柄ではつい甘えが出て言葉が乱暴になることもある。物言いがきつくなっていないか、相手に過度の負担を強いていないか、自戒も込めて時々自分を顧みたい。加害者・被害者を生まない社会にするために、一人ひとりが目の前の身近な人を大切にしよう。