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「未婚限定」の条件、自治体コンテストから大幅減 「ミス」「レディ」なお7割 沖縄では「80歳以上」の独自施策も


「未婚限定」の条件、自治体コンテストから大幅減 「ミス」「レディ」なお7割 沖縄では「80歳以上」の独自施策も 沖縄県北中城村の健康長寿をPRした「美寿きたなかぐすく」の3人(同村提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 地域のPR役などを選ぶコンテストを実施している自治体のうち、応募条件を「未婚限定」としている割合が、2019年時点で25%となり、30年前の88%から大きく減少していたことが21日までに、石巻専修大(宮城県石巻市)の高橋幸准教授らの研究会による全国調査で分かった。

 研究会は「女性の社会進出が広がるなど、時代の変化により結婚にこだわらない考え方が一定程度浸透した結果だ」とみている。しかし、PR役選びを「ミス」や「レディ」など女性に限定した名称で開催している自治体は71%。30年前の97%から減ったが、多様性に配慮した実施へは道半ばと言えそうだ。

 調査は23年1~6月実施。新型コロナウイルス禍の影響を排除するため、19年時点の状況を都道府県と市区町村にアンケートで尋ね、765自治体から回収した。1989年に堺市女性団体連絡協議会(当時)が同様の全国調査をしており、自治体数や回答数が異なるため単純比較はできないものの、研究会が二つの結果を分析して国際ジェンダー学会で23年発表した。

 コンテストでの応募条件に「未婚限定」の規定を設けていた自治体は、89年には88%あったが19年は25%。「女性限定」も90%から54%になり、代わりに、30年前には1%弱だった「性別不問」の割合が37%を占めた。

 前回調査で回答がなかった「ミスターコンテスト」との併催も11%あった。

 審査員の女性比率は21%から31%にやや改善したが均等には遠く、高橋准教授は「男性が女性の美しさを評価するという構図が温存されている可能性がある」と指摘。「自治体の“顔”を未婚女性に限る必要があるのか、考え直す必要がある」と問題提起した。

「美寿きたなかぐすく」で長寿PR

 ミスコンテストを巡っては、女性の若さや容姿に優劣をつける形式に1980年代後半から疑問や批判の声が大きくなり、大学では2000年代から「ミスターコンテスト」を併催するようになった。自治体でも多様な価値観の広がりを背景に、住民が地域の強みを生かす形へ移行が進む。結婚歴や年齢などの条件を取り払うと、健康長寿やユーモアといった魅力がくっきりと見えてきた。

 厚生労働省の市区町村別生命表で女性の平均寿命が2005、10、15年と3回連続で全国1位だった北中城村は未婚既婚を問わず、80歳以上の健康で明るい3人を「美寿(みす)きたなかぐすく」に選んできた。行事への参加や親善交流で活躍。村には「長寿のまちのイメージに合う」「『美寿』のように元気でいられるよう目指したい」との声が寄せられた。20年は順位が下がったため募集は終了したが、村は今後も健康長寿をPRする施策を検討する考えだ。

 広島県江田島市では19年から4年間、市観光協会が選ぶ「江田島さくらプリンス」を同市の自営業筧本語さん(45)が務めた。ユーチューバーとしての活動経験もあり、ユーモアを交えた話術で情報を発信。地元の良さを再発見し「もっと魅力を高めるために行政に掛け合える立場になりたい」と、任期中の21年には市議にもなった。

 就任当時、男性の観光アシスタントは県内に1人で、スタッフと間違われたこともあった。「若くなくても、知識や人生経験といった強みがある。誰でもチャンスがある社会を目指したい」と語った。

(共同通信)