「有事」の際の事業継続や従業員避難を提言 沖縄経済同友会がデニー知事に手交 「グレーゾーン段階」の避難態勢づくりなど12項目


「有事」の際の事業継続や従業員避難を提言 沖縄経済同友会がデニー知事に手交 「グレーゾーン段階」の避難態勢づくりなど12項目 「有事の際の事業継続と従業員避難に関する提言を、玉城デニー知事(左から4人目)へ手交する沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事(同3人目)=26日、那覇市の県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 沖田 有吾

 沖縄経済同友会は26日、県庁に玉城デニー知事を訪ね、有事の際の事業継続と従業員避難に関する提言を手渡した。同会として、有事を念頭に置いた提言をするのは初めてで、全国の経済同友会でも初とみられる。提言は、従業員の安全確保やグレーゾーン段階で避難できる体制づくり、シェルターなどの地下施設の拡充など12項目にわたる。29日には沖縄総合事務局に三浦健太郎局長を訪ねて提言書を手渡す予定。

 沖縄経済同友会はインフラを担う企業や県、離島自治体、自衛隊、海上保安庁などにヒアリングして課題を抽出した。ヒアリングを通じて、運輸やエネルギー関連など重要インフラを担う企業が、有事の際に何をどのように求められるかの具体的な調整が不十分なことや、国民保護法に基づく住民避難指示は国による事態認定を前提としているが、実際の有事では事態認定に至らないグレーゾーンの状態が続く可能性が高いことなど、課題が挙げられた。

 玉城知事は「提言を踏まえ、引き続き国や市町村との連携を図っていきたい。何よりもまず国が優先することは紛争に巻き込まれないこと、紛争を引き起こす状況を回避するための積極的な協力態勢を作っていくことだ」と指摘。

 その上でグレーゾーンの対応などは「国がグレーゾーンであるかを決めないと動けないことが大前提になる。地方自治体が取り得る努力や義務、責任についても国としっかり協議したい。離島県でさらに離島を抱える沖縄は、陸続きではない住民避難をどうするかが非常に大きなテーマだ」と話した。

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は記者会見で、昨年開催された経済同友会の全国セミナーで、ロシアによるウクライナ侵攻などを受けて初めて安全保障をテーマにしたことを踏まえ、有事の際の従業員の避難や事業継続についての対応を会として研究してきたと説明した。

 また、「従業員を守り、事業を継続することは社会に対しての責任でもある。1年かけてヒアリングや視察を重ねてきたが、課題がどんどん出てきた。今の時点で想定しうる課題やそれに対する提言をまとめた」と話した。

■提言の12項目は下記の通り。
①避難の前段階のグレーゾーンから、関連する事業者の想定される役割を周知し、国に対しては事態認定までの迅速な決断を促すこと
②グレーゾーン段階で避難できる態勢づくり
③事業者視点を交えたシミュレーションや訓練の実施
④事業者の社内規定に有事対応を盛り込むことの周知と推進
⑤指定公共機関の役割の具体化と必要な設備の援助
⑥指定公共機関、指定地方公共機関の定期的な見直し
⑦従業員の安全確保について、国や自治体主導で基準を設けて事業者の足並みがそろうような態勢づくり
⑧非常時の電源確保
⑨要配慮者の避難計画具体化や、避難を望まない者への対応
⑩シェルターなど強固な地下施設の拡充
⑪空港・港湾設備の拡充
⑫自衛隊や海保を含めた多角的な連携

(沖田有吾)