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【記者コラム】空気感を伝える 渡真利優人(暮らし報道グループ)


【記者コラム】空気感を伝える 渡真利優人(暮らし報道グループ)
この記事を書いた人 Avatar photo 渡真利 優人

 琉球新報社7階にある統合編集局。広いフロアには部署ごとに〝シマ〟を作った机が並ぶ。社内ではピーコ(共同通信社の速報ニュース)が流れている。

 私が記者になって1年。8月から福祉担当として土曜日の生活面連載「てぃーだ」を担当した。障がい者が通う事業所に足を運び、作業に懸ける思いや夢などを取材してきた。

 記事ではできるだけ書き出しに「雑観」を入れ、読者にリアリティーを持ってもらえるよう工夫した。そもそも雑観とは、現場の状況や関係者の表情を伝える記事で、体の五感を働かせて、熱や光、音、においなどを感じ取って表現する。この記事の冒頭に書いた文章が雑観だ。普段働いている社内の様子を表現してみた。

 1年間、私を苦しめたのは雑観といっても過言ではない。その場の空気感を文字で表現しなければならない難しさがあるからだ。例えば発言を「~と話した」「~と語った」と表現すると、読者に人柄が伝わりにくい。淡々とした口調だったのか、力がこもり熱く語っていたのかなど、表情やしぐさといった一挙手一投足に注目した。かといって雑観にばかり気を取られて話を聞き逃すこともあり、取材の難しさを痛感する日々だった。

 明日から新年度。記者2年目となり、運動班へ配属される。文字で空気感を伝える難しさは変わらないが、読者がその場にいるような臨場感を味わえる取材と記事を心がけたい。