コロナ禍や物価高騰の影響を受けた観光事業者の支援を目的とした県の補助事業を巡り不正が疑われる申請が相次いで確認された問題で、採択された385事業者のうち、不正申請などを理由に補助金交付に至らなかった事業が4割に当たる154件あったことが県などへの取材で分かった。
関係者によると、不正が疑われる申請は9日までに、少なくとも100件はあったという。
支援制度は「県観光事業者継続経営サポート事業」で、2022年度から2年間実施された。年間約10の補助事業の事務局を担う県産業振興公社の担当者は「通常の補助事業で不正が疑われることは100件あるうち1件あるかないかだ」と、同事業の異例さを指摘した。
申請が取り消しに至った154件のうち、事業内容が不適切と判断し不交付としたのは11件。残りの143件は事業者らが自主的に申請を取り下げた。県によると、不正を理由とした不交付通知書を、事業者が受け取ることによる心理的負担を考慮して、県側が取り下げを促したものが大半だったという。
昨年12月ごろに、事業の実態が確認できないなど不正が疑われる申請が判明。関係者によると、報告通りに事業が実施されていないことや、実在しないウェブサイト、タクシーツアー、研修が申請されるなど悪質性が疑われる事例があった。実施された事業の中にも水増しが疑われるものも多くあったという。
県によると、実施事業や支払いなどで事実と異なる内容の書類を偽造し、公金を詐取しようしただけで詐欺を疑われるおそれがある。補助金の支払いを受けなくても、虚偽の申請を行うだけで不正となる可能性があるとして、県は事業のホームページで注意喚起を促していた。
県の担当者は「取り下げた事例全てに不正が疑われるのではなく、計画通りに取り組みを実現できなかったり、人を雇えなかったりしたなどの理由で申請を取り下げる事業者もいた」と説明した。
(與那覇智早)